出来事
クリスタル大戦で使用されたリンクパールから響く無気味な声。それは死してなお仲間の安否を気遣う、冒険者の魂。そして彼を救うために活躍した現代の冒険者。そんな不思議な話をあなたは信じるだろうか?

それは4ヶ月ほど前の話である。ある人物の父親の形見であるリンクパールから、うめき声が聞こえるようになったという。

耳を傾けて聴いてみると、それはクリスタル大戦当時、両親の仲間だった人物の声であるようだった。声の主は、囮となって、共に行動していた8人の仲間を助けるために戦ったというのだ。

彼の両親は大戦当時、9人から成る隊に参加し、3人の若者を迎えに行く途中、闇の王の手勢に襲われ壊滅の危機に瀕している。そして仲間の1人が囮となることで、皆、生き長らえる事ができたのだという。

彼の父親は、仲間を犠牲にして生き長らえたことを後悔し続けたまま、その時の傷が原因で息を引き取ったそうだ。

彼は手紙を書き、冒険者の協力を募ることにした。声の主が、いまだ仲間の安否を気遣っているのならば、冒険者が彼の仲間に扮して迎えに行くことで、何らかの結果がでると考えたのである。

彼の依頼に応えるため、数多くの冒険者が彼のもとへ訪れた。彼は形見のリンクパールからシェルを作り、冒険者たちにそれを渡した。冒険者たちは、その声を頼りにかつて声の主が犠牲となった地を目ざした。

一組の冒険者たちが彼を見つけたのは、高原の崖の上だった。朝もやに見えるその姿は透けて、彼が死に属する存在であることを物語っていた。

声の主は、彼らに気づくと「待っていた……」そして「ありがとう」と告げて、朝陽の中にその姿を消したそうだ。

不思議な話である。

この話を知る冒険者は多く、その探索に参加したと語る冒険者も少なくない。

死してなお、安否を気遣えるだけの友情。たとえ亡霊となっても、声の主は幸せだったのだろう。

こんな話をして、あなたに信じてもらうことができるだろうか?
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