出来事

これまで報告例の少なかった宝箱が、最近各地の迷宮で続々と発見されているようだ。

多くの冒険者が、その中の財宝を求めて迷宮へと向かっている。そこで一躍脚光を浴び始めたのが、シーフと呼ばれる者たちだ。

迷宮の奥に隠された宝箱には、人々をひきつける力が宿っている。

冒険者たちが危険を冒して迷宮へ向かうのは、その不思議な力に抗えないせいかもしれない。

迷宮の宝箱たちはまるで生き物のようにあちこちに出没するため、見つけにくい。また仮に出会えたとしても、開錠するためのカギが必要だ。冒険者たちはそのカギを手に入れるために、迷宮をさまようことになる。

ある戦士が、「宝箱にもてあそばれているような気分だ」 などと表現したように、隠された宝を手にするまでの道のりは長く険しい。
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しかし、時代は変わりつつある。多くの時間を費やしてカギの持ち主を探さなくとも、宝箱はシーフの手で開かれるようになったのだ。

それはつい先日のこと、あるシーフが施錠された宝箱の構造を解明し、特殊なカギを器用に扱って開錠することに成功した。まさに快挙だった。カギの持ち主探しの日々から、冒険者を解放することとなったのだから。

さっそく特殊なカギは複製され、巷に出回るようになった。ところが、開錠そのものにも高度な技術を要求されるため、これを使いこなせるのはシーフのみだという。そのおかげで、希代の宝を探す者に同行を望まれる機会が増えたそうだ。

そもそも、戦利品の獲得など、戦闘以外でも貢献する彼らは、冒険者としては異彩を放つ存在と言えよう。

立ちはだかる敵を会心の一撃で倒したかと思えば、攻撃の隙にその所持品も頂戴している。遠くに姿を現した宝箱のもとに、驚くべき俊足で駆け寄ったりもする。シーフは、日々の冒険に彩りを添えてくれる。

今でこそ冒険者となり活躍するシーフが増えているが、彼らが世のために獣人と戦うようになったのは、コンクェスト政策が布かれた後のこと。

何にも縛られることなく、巨万の富を夢見て迷宮を進むのが、"盗賊"としての本来の姿だ。盗賊とは言っても、彼らは昔から無益な争いを好まないことで知られていた。財宝よりも"義"を重んじ、人を相手に金品をかすめとるような真似もしない。

そんな盗賊たちの誇りは、時代を超えてなお、色あせずにいる。共に旅すれば、きっとそう感じるはずだ。


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