出来事 波紋広がる“アーティファクト”の噂

冒険者たちの間に流れる噂は数知れない。その多くは根拠のない憶測や、誇張された伝聞だったりするのだが、まれに真実が隠されていることがある。今、いくつもの噂が結びつき、幻の防具の存在が浮かび上がった。

「天の塔のタルタルはひた隠しにしてるけど“星の大樹”に異変が起きてるみたい」

このような噂話は、冒険者が集う場所に足を運べば、イヤというほど聞くことができる。

「おい、サンドリア王国の方で、亡霊騒ぎがあったらしいぞ」「伝説の格闘家が、長旅からバストゥークに戻ったようだ」「天晶堂がシーフに仕事を託し、また何やらはじめたぞ」「空からものスゴい防具が落ちてきたってよ」

無責任に語られるこれらの噂を調べたところ、ある共通点を見出すことができた。不思議なことに、必ず“いにしえの品”の話にたどり着くのだ。

その“いにしえの品”については、こう語られている。

「誰も見たことのない防具を身にまとう冒険者がいた。

彼は、それが“いにしえの品”であると得意げに語ったが、入手した経緯などは一切明かそうとしなかった。やがて、その防具のせいで命まで狙われるようになった彼は、逃げるようにして世間から姿をくらましてしまった」

この人物と共に旅したという冒険者は、次のように語る。

「奴は名うてのトレジャーハンターさ。もとから世界中の宝に詳しかったが、あのときは、まるで何かに導かれたみたいに“あの”宝箱までたどりつきやがった。

そして見たこともないカギで、そいつを開けたんだ」

彼の装備を目にした鍛冶職人が言う。

「確かに見たぞ。間違いなく、かつての名匠ボルグヘルツが鍛えたという“ボルグヘルツの魔手”だった。

ワシら職人が“アーティファクト”と呼ぶ幻の品のひとつだ。

あれはクリスタル戦争の混乱で失われたと聞いとったが……。20年以上もどこで眠っていたのだ?

まぁ、ワシが見たあの男は名だたる剣士に違いなかろう。

“アーティファクト”は、己の道をゆく者だけが身にまとえる“特別な品”なのだからな」

またある国境警備兵からは「“アーティファクト”をまとった魔道士や武道家を何人か見た」と、聞きだすことができた。

“アーティファクト”については、その存在も含め、まだ謎だらけだ。

だが好奇心溢れる冒険者たちは、これまでも幻とされていた財宝を数多く見つけてきた。

もしかすると、彼らならば、その存在をつきとめ、身にまとう日が来るかもしれない。

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