読み物 ギルド調査員の手紙 -織工-

4通目 班長はご機嫌ナナメ
サンドリア班のみんな、ごぶさた! Muclaire(ミュークレール)の結婚式、もうすぐだね。そっちの準備は順調なの? オレたちも、式の2日前にはウィンダスを出発する予定だよ。

そろそろ式場でふるまう料理や飲み物のことも相談しなきゃいけないってのに、朝からVanglaise (ヴァングレーズ)班長の機嫌が悪くてさ。うかうか近寄れないんだよ。

あいつには、織工ギルドに入門して以来ヘンに張り合ってるタルタルの女の子がいるんだよね。その子に「英知のヘッドバンド」ってのを見せつけられちゃったらしいんだ。それで“我々も作り方を調査せねば!”とか言い訳をしながら、自分も作ってやろうと躍起になってるみたい。

で、ここ数日はずーっと、ギルドの職人さんに張りついちゃって、何度も何度も挑戦してるわけ。もっと冷静な男だと思ってたのに、おかしいな。まだ 一度も成功していないばかりか、とうとう今朝は、貴重な「カーボンファイバー」をダメにしちゃってさ。ああいう性格だから口には出さないけど、相当イラついてるよ、あれは。

Vanglaiseの機嫌が悪い日はそばにいるだけで八つ当たりされるから、実は オレ、ついさっきまで隠れて釣りしてたんだ。お陰で、部屋中ザリガニと堀ブナでいっぱいさ。

写真
あ、いや、オレだってしっかり裁縫の研究はしてるよ。さぼってるように見せかけてるだけで、ちゃんと独自に調査を進めてるんだから。

たとえば最近では、冒険者から情報を仕入れて、「草糸」を一度に3束も作れるようになったんだよ。これが、おもしろいんだな。ついつい調子に乗って作りつづけたら、あっという間に在庫がいっぱい!

そうだ。今度その「草糸」で「草布」でも織って、Vanglaiseに友情価格で売ってやろうかな……。

ん?「草糸」が余ってるなんて知れたら、冒険者と街の外に出てヤグードと戦ってきたことがバレちゃうかも。それは、まずいな。

それにしてもさ、裁縫も楽じゃないんだね。だって糸や布地は何種類もあるし、それだけじゃなくて、わざわざ他国のギルドから取り寄せて使うような素材もあるんだ。最初は、名前をおぼえるので精一杯だったよ。

写真 素材のことを調査してわかったんだけど、裁縫の世界では「モコ草」とか「サルタ綿花」、それから「亜麻」とか、天然の素材をたくさん使うんだよね。「絹糸」だってこのあたりで採れる貴重な素材のひとつだしさ。

昔から素材に恵まれた土地だったから、ウィンダスには機織りや仕立て屋が自然と集まってきたのかな。

……そっか! それが織工ギルドの興りだったのか。オレって冴えてる!

ウィンダス出身Nahm-Yahm(ナームヤーム)たちなら知ってるかな? 織工ギルドって歴史が古いから、5つの院の関係者を中心に、昔からたくさん魔道士の顧客を抱えてるらしいよ。ほら、冒険者を“ヘッポコくん”呼ばわりするS博士もそのひとりだって噂だよ。

ん!? 今、ギルドの方からVanglaiseの叫び声が聞こえたような……。

もしかして、ついに「英知のヘッドバンド」が完成しちゃったとか? それともまた「カーボンファイバー」がダメになったか? おもしろそうだから、ちょっと様子見てくるよ!

それじゃあ、Muclaireの結婚式で会おう!
戻る