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1に1を足せば2になる。あたり前のことだが、我々が手に取る多くの物が、何かに何かを足してできている。つまり、ある物の中には、他の何かが含まれているというわけだ。
不要になった物があると、我々は2つの手段のどちらかを選択する。
1つは、廃棄処分。使い道がない物を“捨てる”という手段である。
もう1つは、他者への譲渡や販売。友人にあげたり、競売に出品したりして“自分以外の誰かに利用してもらう”手段である。
どちらにせよ“不要になった品を手放している”ということに変わりないだろう。使い道のない物が身近にあっても“置き場に困るだけ”というのは、我々にとって当たりまえの考え方であった。
サンドリアに、Voltinie(ヴォルティニィ)さんというエルヴァーンの女性がいる。
彼女は、南サンドリアの広場まで足を運ぶのが日課になっていて、集っている冒険者から、彼らの不要の品を安く買い取っている。
獣人用の鎧や、駆けだしの冒険者しか興味を示さないような粗末な剣。
不思議なことに、見目麗しいレディには、およそ似つかわしくないガラクタばかりを、彼女は選んで購入しているのだ。
たとえば彼女が好事家であるならば話は早いが、そうではない。Voltinie(ヴォルティニィ)さんは “秘密の方法”で、入手した廃品から貴金属や木材を取り出しているのだ。
それを、様々な職人に通常価格よりも安価に提供し、いくらかの儲けを得ているのである。
苦しい家計を助けるために始めた廃品利用だったそうだが、今ではそれが軌道に乗って裕福になったという。
彼女は逆転の発想で、この“秘密の方法”を見つけたのだそうだ。
一般にクリスタル合成法は、何かに何かを足して、別の何かを作る技術として知られている。
それならば、逆に合成でできた品物を分解して、その素材となった何かを取りだすことも、また可能である筈だ、と。
彼女はそう考え、そして分解に成功したのである。
Voltinie(ヴォルティニィ)さんだけでなく、これに気づいていた人は他にもいたようだ。
近い将来、この秘密の方法は、世界経済に多大な影響を及ぼすかもしれない。
1に1を足せば2になる。裏を返せば、2には1が潜んでいるのである。 |
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