出来事 街角を飾った鼻の院からの贈り物

各国の街角に、期間限定で設置された巨大樹が、人々の話題をさらった。当初、怪物が侵入したと勘違いされ、怯えられていたが、鼻の院から寄贈された飾り物であることがわかると、多くの見物客が訪れた。

星のように瞬く無数の光が散りばめられ、雪の結晶がきらきらと舞い降りる巨大樹の飾り物は、とりわけ夜の街を華やかに彩った。

贈り主の鼻の院は、おもに植物を研究している機関で、ウィンダス名物の夜光草を生み出したことで有名だ。

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鼻の院によると、今回の巨大樹は、世界の平和と人々の幸福を願って、各国に寄贈したものであるとのこと。

森林などで旅人を襲う巨大な怪樹の改良品種であったために、受け取った各国は大いに困惑したが、子どもたちの目を楽しませるために、安全性を確認した上で設置に踏み切ったという。ただし、幹に浮かぶ恐ろしい顔が見えない向きで……。

ジュノでは、多くの冒険者が立ち寄るル・ルデの庭に、この巨大樹が設置された。同じ樹が各国の街角にも飾られていると聞いた冒険者が、望郷の念を募らせて、久方ぶりに帰郷したという話も少なくなかった。

色とりどりの宝石のような光に彩られた巨大樹の下では、しばし戦いの日々を忘れてたたずむ彼らの姿が目にとまった。

旧友との再会を果たした者たちは、互いの活躍を笑顔で称えあい、離ればなれになっていた恋人たちは、幸せなひと時を過ごした。

彼らは、改めて感じたことだろう。遠方の地へ赴き、時には孤独を味わうことがあっても、いつでも帰れる故郷があることを。そして、数多くの同郷の仲間がいることを……。

余談ではあるが、鼻の院は巨大樹の飾り物を作った後も、謎めいた植物の試作を繰り返しているという。大量の果物を院内に運び込む研究員も目撃されている。今度は、いったい何の研究を始めたのだろうか?

地元ウィンダスでは“研究に行き過ぎが多い”とささやかれている同院だけに、近隣の住民たちは彼らの動きに一抹の不安を感じているらしい。

しかし、そんな大人たちの心配をよそに、各国の子どもたちは、鼻の院の次回作と憧れの冒険者たちの帰郷を、心待ちにしているようだった。

Rirukuku

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