出来事 財宝にまつわる3つの問題

ここにひとつの美しい宝珠がある。

財宝を飲み込んだ怪物が封じ込められていると言い伝えられる宝珠だ。果たして、あなたには封印を解き、怪物を倒して、その財宝を手中にする自信がおありだろうか?

この怪しげな宝珠を商う不気味な行商人の存在は以前から噂されていた。

しかし、それを購入した者の話となると、とんと耳にすることはなかった。

それは、この宝珠から財宝を得るには3つの問題があることが広く知られていたためである。これを解決しない限り、何人たりとも財宝を手にすることはできないのだ、と。この3つの問題は、次のように伝えられている。

1つめは、この宝珠の封印を解き、中の凶悪な怪物を解放する必要がある、ということ。

そして2つめは、その怪物と戦い、打ち勝つ必要がある、ということ。

最後の3つめは、この不思議な宝珠にまつわる話が偽りであれば、すべては徒労に終わる、ということである。

無論、どこかしら、うさん臭さの漂うこの宝珠を、わざわざ大枚はたいて買うような者はいまいと皆が思っていた。

ところが最近、この宝珠を、しかも大量に買い占める者が現れたものだから、たちまち話題になった。

その商人、Shami(シャミ)氏は我々の取材申込を快諾し、背嚢いっぱいに詰め込んだ宝珠を見せながら、購入の理由を聞かせてくれた。

「確かに、普通こんなマユツバもんの話、誰も信じたりしねぇだろうし、モンスターと戦うのなんざ、まっぴらごめんだろうさ。

……ただし、冒険者サマを除いてな。こないだのパルブロ鉱山のミスリル騒ぎは覚えてるだろ?

ヤツら、刺激に飢えてやがるのさ。

きっと連中なら、話のタネにとかなんとか抜かして、こいつに飛びつくだろうよ。そんで、オレは一儲けって寸法さ。え? この宝珠がニセモノだったらだって?

そんなことは知ったことじゃねぇ。そんときゃ、オレだって被害者なんだからよ!」

近々、冒険者の前に姿を現すと予告しているShami氏。果たして、彼の皮算用は上手くいくのだろうか?

話のタネにというわけではないが、記者もその宝珠を1つ譲ってもらい、冒険者立会いのもと、地面に叩きつけてみた。

しかし残念ながら、宝珠は粉々に砕け散っただけで何も起きなかった。

たとえ、この宝珠の言い伝えが本当だとしても、怪物の封印を解くのでさえ、一筋縄ではいきそうもない。

果たして、真偽のほどを見届ける冒険者は現れるのだろうか?

Ainworth

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