特派員 遊びのススメ

「はじめたきっかけは?」と聞かれたら、「そこに木があったから」というのが本音だろう。先日、冒険者仲間から、とある競技に誘われた。タロンギ大峡谷にある街道をまたぐ木の根っこを往復し、そのタイムを競うレースをやるのだという。


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そういえば最近この手の誘いが増えた。日々モンスターと戦っている冒険者から、狩りや技術の鍛練の誘いがくることは、さほど珍しいことでもない。この手の誘いとは、いわゆる“遊びのススメ”である。

ジュノを中心にインタビューを試みたところ、多くの冒険者が色々な遊びに参加していたことがわかった。

人によって呼び方やルールは異なるが、相手を探しケアルを使って捕まえる “かくれんぼ”や、ダイスを振って当たり目が出たら景品が格安で得られる“福引”など、未熟な冒険者でも参加できるものから、釣れたモンスターによってポイントが加算され釣果を競う“釣り大会”や、地面から突き出した巨大な骨に登り、互いに両端から侵攻していく“陣取り合戦”といった、冒険者としての腕前が必要とされるものまで、実にさまざまな遊びが流行している。

冒険者が、このような遊びに熱中する背景には、彼らが身を置く日常が、命の危険と隣合わせであることがあげられる。

連日のように凶暴なモンスターたちとの死闘を繰り返していれば、しばし日常を忘れ、童心にかえってみたくなるものだ。

冒頭でも述べたように、きっかけは見慣れた風景のなかにある些細なことだ。渡れそうな木の根や登れそうな骨をみつけたから登ってみたに過ぎない。

冒険者はみな、多かれ少なかれ輝くような好奇心を胸に秘めている。日常の些細なきっかけから遊びを見いだすことも、そう難しいことではないのである。

そして、これまでの日常では見落としていた、そうした遊びを発見した感動を、冒険者は仲間と分かち合いたいと思うのだ。

ベテラン冒険者と新米冒険者が同じパーティを組むなど、普段はあり得ないことだが、遊びの中ではその垣根が取り払われる。かえって戦闘経験の浅い者のほうが、遊びの腕前は上だったりすることもあるのだ。

これらの遊びを体験した者が、次の機会に別の仲間を誘う。そして、またその遊びを通じて新たな仲間と出会い、より大きな遊びの輪が形成されていく。

殺伐とした戦いが続く日常からは得られない喜びを、まだ見ぬ多くの冒険者と共有したいと願う者がいる限り、“遊びのススメ”という誘いは、これからも増えていくことだろう。
Palulu / Siren

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