読み物 ギルド調査員の手紙 -骨工-
7通目 骨くずと不眠の関係

こちらVanglaiseだ。サンドリア班の諸君、先日送ってくれた釣竿だが、あれは素晴らしいでき栄えだな。大切に使わせてもらっている。

私とFreddal(フレッダル)は、調理、織工に続き、骨工ギルドの調査に着手している。始めてみて気づいたのだが、骨細工の世界は、えも言われぬ魅力に満ちている。たとえば、素材ひとつにしてもそうだ。

陶器のように滑らかな角、艶やかな甲殻……。これらを無心に削っていると、時間の流れまでもがゆったりと感じられるから不思議なものだ。

ところで君たちは、なぜウィンダスに骨細工という文化が根づいたのか、考えたことがあるか? どうやら、近郊のコルシュシュ地方に、骨細工の素材が豊富に眠っていることが、理由のひとつらしいな。

タルタルの古老たちに聞いたところでは、大昔は、巨大な生き物たちがあのあたりを闊歩していたそうだ。その骨や牙などが豊富に入手できたために、ウィンダスの民は、自然とそれらを加工し、道具や飾り物として利用するようになったのだという。

確かに、タロンギ大峡谷をチョコボで走っていると、何かの化石らしきものが、あちこちで見られるな。


写真
また古老たちは、シャクラミの地下迷宮と呼ばれている危険な洞穴も、骨材の宝庫であると教えてくれた。

これらの話はFreddalを刺激するに十分だったらしく、以来、奴は毎日のように「つるはし」を手にあちこちに出掛けては、「巨大な大腿骨」や「大サソリの甲殻」などの貴重な骨材を持ち帰ってくるようになった。

昨日などは、シャクラミの地下迷宮まで足を運んだという。モンスターの巣窟に、たったひとりで出向くとは、実にいい度胸だ。

何でも迷宮の中には、宝箱やカギ目当ての冒険者が大勢張り込んでいたとかで、その側で奴は発掘をゆっくりと楽しむことができたそうだ。嘘ではないにせよ、あの問題児のことだ、どうせ冒険者に多大な迷惑をかけてきたに違いない。

とにかくまあ、奴に言わせてみると“コルシュシュ地方は、週刊発掘パラダイス!”だそうだ。

そんなお気楽な相棒とは違って、私の方は最近、不眠で悩んでいる。

試しに「カモミール」の香りを嗅いだり、「ワイルドオニオン」を枕元に置いたりしてみたが、まったく効きめがない。こうして手紙を書いている今も、明け方の5時過ぎ。まだ、昨日から一睡もしていない有様だ。

理由なら、自分でもわかっている。


写真
実は、「ボーンリング」の調査用にここ数日削っている「骨くず」のことが、気になってしかたないのだ。

私だけではなく、骨細工職人ならば、一度くらい考えたことがあるはずだ。

一般には動物の骨と言われているが、あれは実のところ何の骨なのか、ということを……。

夜ベッドに入ると、私は決まってこのことについて考え始めてしまう。おかげでなかなか寝つけない、というわけだ。

君たちはどう思う? Freddalは考え過ぎだと笑うのだが、私が思うに、もしかするとあの骨は……。

いや、やはり奴の言う通りかもしれんな。妙な話をしてすまなかった。忘れて欲しい。

そうだ、肝心な話を失念していた。実は我々は、来週にでもサンドリアへ赴こうと考えている。

今後、より高度な合成について調査するためには、骨細工だけでなく、革細工の技術なども必要になってくるらしい。そこで我々は、革の扱い方などについて、サンドリア班の諸君に学びたいのだ。よろしく頼む。

ああ、すっかり日が昇ってしまった。私は今日も、眠れなかったようだな。
眠りを誘うよい方法を知っていたら、ぜひとも教えてくれ……。

戻る