出来事 3国の競売所、辺境へ進出

先頃、ジュノを除く3国の競売所が、辺境地域への進出計画について合同で発表した。これは3国合意のもとに決定されたものであり、現段階で各々が営業拠点とする地域まで確定しているという。各競売所側の発表内容は、次の通りである。

サンドリア競売所は、最有力候補地としてゼプウェル島を挙げ、現地を視察済みであることを明らかにした。

これは重大な発表だった。ゼプウェル島といえば、古くはガルカの都があった島として知られているが、そこへつながる洞門は長い間固く閉ざされてきた。競売所がその地へ進出するということは、近い将来にはゼプウェル島への道が開放される可能性があることを認めたも同然なのだ。

サンドリア競売所によると、島に広がる広大な砂漠にはオアシスが点在していて、彼らが営業拠点を置こうとしているのは、その中の集落であるらしい。ある職員は、現地へ進出することの有用性について説明した。

「ゼプウェル島へ赴いた冒険者が、現地の競売所に品物を出品すれば、我々はサンドリアにいながらにして競売所でその内容を知り、入札することができます。同様に彼らも、辺境の地にありながら本国の競売所の情報を得て入札することができます。つまり、2つの競売所があらゆる情報を共有できるようになるのです」 写真

またバストゥーク競売所は、エルシモ島西端のある場所に進出する見通しであると発表した。現在は、競売所の営業許可に関する交渉を、現地の有力者と最終段階まで詰めている最中だという。

公の場で明言こそされなかったが、エルシモ島西端で競売所の利用者がいそうな場所といえば、海賊の巣窟ではないかと噂されている例の港と考えていいだろう。現地の有力者とは、おそらくバストア海の海賊たちを率いる人物のことだ。

自国の海運業者を脅かし続けてきた海賊たちの実態をつかむや否や、彼らの根城に乗り込んで、こともあろうにそこで商売を始めようとは、バストゥークらしい報復ではないか。

それにしても、あの場所で取り引きされているという禁制品や密輸品がいつかバストゥークの競売所にあふれ、ギルさえあれば誰でも入札できるようになったりするのだろうか?

「あのような場所にこそ、我々のような公営機関の介入が必要なんです。今後は、開かれた港として我々と共に発展していくべきなんです」

ヒュームの職員が、このような曖昧な回答ではぐらかした。

一方で、ウィンダス競売所は、同じエルシモ島のカザムにて、現地の族長たちとの交渉を終えたと発表した。先に報じた通り、ジュノ-カザム間の飛空艇運航については再開が目前に迫っているため、職員らは利用客受け入れの準備に奔走しているらしい。

さて、状況は理解できたとしても、なお疑問が残る。彼らが辺境へ進出する目的は何なのか?

ジュノの商人たちは、口を揃えて「3国が示し合わせて辺境へ進出するのは、ジュノ競売所に対抗するためではないか」と言う。

確かに、3国の競売所は利用者数の減少に悩まされ続けている。それに引きかえ、交通の要衝にあるジュノの競売所は、多くの冒険者が長期滞在していることもあって、ひとり勝ち状態にある。

「ジュノ競売所への対抗ですって? それはあなた、勘繰りすぎです!」

ウィンダス競売所の職員は、声高に言った。

「各競売所の利用客は、コンクェスト政策の担い手である冒険者さんがほとんどなのですが、活躍目覚しい彼らの活動範囲は広がる一方……。それでも3国の競売所は、彼らを少しでもフォローしようと営業努力を続けているのです。ただ、コンクェストに直接参加していないジュノには、特にその必要もない。わかりましたね? 本当にそれだけの話なのですよ」
Rirukuku

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