お笑い芸人参上

一期一会という言葉がある。一生でたった一度の出会いという意味だ。船に乗り合わせただけ、街角ですれ違っただけ、それきり会うこともない一時の出会い。そんななかで自分を印象づけ、記憶に留めてもらいたいと願い、漫才という手段を選んだ人物がいる。

それが、これから紹介するお笑い芸人のBanchouさんだ。

今でこそ、ジュノを賑わせる人気者となった彼だが、最初は故郷のバストゥークで、友人相手に地味なツッコミ芸を披露していたそうだ。それをたまたま目にした冒険者たちに好評だったことがきっかけで、長いネタ作りをするようになったという。

あるときジュノで旧友と再会したBanchouさんは「今みてもらわねば今度いつ会えるかわからない」と、こともあろうに下層の競売所前で、持ちネタの漫才を旧友相手に披露してしまった。

すると瞬く間に人の波が押し寄せ、押すな押すなの大混雑となったのである。

「もっとやれ」「最初からみたい」というやじの声が、Banchouさんの芸人魂に火をつけたのか、気がついたときには「今度ライブをやります!」と叫んでいたそうだ。

その後、恒例となった漫才ライブは、回を重ねるごとに観客が増え、今では固定ファンの数も多くなった。毎回新しく用意されるネタは、すべて自室のモーグリ相手に練り上げられたBanchouさんのオリジナル作品だ。それは実に巧妙で、笑いのツボがそこかしこに設けられている。

「シーフなので好きな食べ物はシーフード」といった洒落はもとより、「命からがらモンスターから逃げている人を助けてあげようとケアル詠唱!しかし次の瞬間キラキラと光に包まれたのは自分」といった、冒険者ならではの失敗でさえ、彼の手にかかれば、たちまち笑いのネタに変わってしまう。

Banchouさんは、こう語る。 写真

「ジュノにはベテラン冒険者も多いですが、経験の浅い冒険者でもわかるようなネタ作りを心がけています」

今では、最初は恥ずかしいと言ってただ立っているだけだった相方のHechaさんも、積極的に動きなどを合わせて協力するようになり、絶妙なコンビプレーで舞台を沸かせている。

公演の後、花束やお菓子、おひねりなどを、観客から受け取ることもしばしばだという。

彼の漫才を見続けてきたあるファンは、「以前に比べて、動きなどが巧みになっている」と、上達ぶりを喜んでいた。

その一方で、観客の数が増えたために「細かい動きが見えない」「まわりの笑い声で、肝心の漫才が耳に届かない」「Banchouさんが見えなくて、インビジしているのかと思った」といった、苦情も出ている。

数回に分けてライブを行うなどの工夫をして対応しているそうだが、まだまだ解決しきれていないようだ。

「滝の前に立ったような拍手の音を聞くと、やめられなくなりますよ」

そういって笑うBanchouさん。彼の漫才を見る者たちの笑顔や笑い声、そして感謝の気持ちが、彼をまた次の舞台へと向かわせているのだろう。その熱演の様子は、まるで笑いの輪がヴァナ・ディール全土に広がっていくのを確信しているかのようだ。

「笑いで怖いのはマンネリ。我々のようなお笑い芸人がこれからもどんどん増えてほしい。そして互いに芸を磨いていきたいです。

みなさんも一緒に漫才やってみませんか?」

Palulu / Siren

戻る