出来事 大きな砂漠の小さなモンスター

かつてガルカが命がけで抜けてきたコロロカの洞門には、今、新天地に向かおうと、冒険者が逆に詰めかけている。果たして彼らは、どのようなモンスターと遭遇するのだろうか。

彼らが一様に目指すのは、洞門の先にある未踏の地、ゼプウェル島。私はそうした冒険者のひとり、獣使いのKarさんに、同行した。

延々と続いた薄暗い洞門を抜けると、眼前には、まばゆい砂丘がどこまでも広がっていた。ゼプウェル島全域に広がるアルテパ砂漠だ。容赦なく太陽が照りつけるこの地では、植物が根付くことすら容易ではあるまい。

初めて訪れた土地である。地図を持ち合わせているはずもなく、冒険者たちは皆、"なにか"を見つけようと、我先に駆けだしていく。Karさんも、彼ら同様とりあえず走り始めた。しかし、初めて見る景色に圧倒され、油断していたのかもしれない。 写真

小高い砂丘の稜線を越えた時、その反対側に隠れていた小人のようなモンスターと、出くわしてしまった。タルタルくらいの上背。ほっそりとした緑色の体。それは噂に聞くサボテンダーのようだった。

慌てて逃げ出したKarさんを、ひょこひょこと2本足で追いかけ始めたサボテンダーは、まさしく異形の植物と呼ぶに相応しい奇妙な姿だった。

根付くことさえ許さない死の砂漠で水分を獲得するため、自ら移動を始めた植物の知恵が、このモンスターを生み出したのであろうか。

そのようなことを考えている間に、Karさんは襲いかかってきたサボテンダーを魅了し、従えることに成功していた。彼の後について、バランスを取るように細い腕を揺らしながら走り、時に主人を見失いかけ、懸命に追いすがるサボテンダーの姿は、まるで子供のようだ。彼によると「マンドラゴラに匹敵する愛らしさに、僕の方が虜になってしまいそうだった」らしい。

しかしその外見とは裏腹に、サボテンダーの戦闘能力は驚異的であることが、すぐに分かった。Karさんが砂漠の獣人アンティカに襲われると、主を守るため、小さな体から無数の針を飛散させたのだ。そして、針はアンティカ兵の固い殻をも見事に貫通し、ついにその息の根をとめたのだった。

「偶然出逢った相棒だけど、とても頼もしい能力の持ち主だね。もっともそれは、敵に回したら逆に恐ろしい能力だってことでもあるけど…」

愛嬌ある外見とは裏腹に、冒険者の脅威となるであろうサボテンダー。

ゼプウェル島だけではない。エルシモ島など冒険者が新たに足を踏み入れる辺境には、こうした未知のモンスターがまだ数多く生息していることだろう。そして、それぞれ環境に適応した生態を持っているはずだ。

ただモンスターを倒すためだけでなく、それらの姿や能力を我が目で見たいというのも、多くの冒険者が新天地をめざす理由の1つになっているに違いない。
特派員 : Kanox / Caitsith

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