読み物 ギルド調査員の手紙 -漁師-
10通目 親愛なる冒険者たちへ

そうだ! 今日は、冒険者のみんなに手紙を書いてみることにしよう。

そもそもオレたちギルド調査員って、冒険者のみんなに合成の世界を紹介するために活動を始めたんだ。けど、気づいたらさ、オレたちの腕前を凌ぐ冒険者も、たくさんいたりするんだよね。それって、すごく嬉しかったりするんだ。

そうそう、実はこの前さ、ギルド調査団の本部から、そろそろジュノへ戻るように、っていう指令が出たんだ。各国ギルドの調査と報告をある程度終えたってことで、我が団は解散されるみたい。

やったぜ、任務完了ー! って喜んだのもつかの間、なんか寂しくなっちゃってさ。Vanglaise (ヴァングレーズ)に話を持ちかけたんだ。

“最後に調査員を全員集めて、楽しいことしよう!”って。

そんなわけで、オレたちウィンダス班は、マウラ発の連絡船で釣り大会を開催したわけ。調査員は全部で8人もいるから、船上はてんやわんやの大騒ぎになったけど、すごく楽しかったんだよ!

オレたちは、ずいぶん前に漁師ギルドに入門して以来、釣り三昧の毎日だったから、腕には自信があったし楽勝だろうって思ってたわけ。

ところが、他の班が予想外に手強くてさ、最後まで大接戦だったんだ。

何でもいいけど、バストゥーク班の騒ぎっぷりはすごかったよ。女の子が3人集まるだけで、なんであんなに賑やかになるんだろう?

写真 Lilli(リリー)は、魚の群れを尻尾で探知してニャーニャー大騒ぎ。その横でCalvita(キャルヴィータ)は、「カーボンロッド」や「グラスロッド」を豪快に折りまくり。面倒見のいいMuclaire(ミュークレール)は、釣竿の修理に追われてたっけな。

そんな感じでも、3人のチームワークが完璧だったから、かなりの数を釣り上げててびっくりした。

いや、オレがもっと驚いたのはサンドリア班! だって、Dalgaumm(ダルガウム)の釣竿が、あのまぼろしの「太公望の釣竿」だったんだよ? そこらの魚じゃびくともせずに、大物だってガツンと釣り上げちゃうんだ。オレも、あの釣竿が欲しい!!

Nahm-Yahm(ナームヤーム)も、序盤は相当の数を釣ってた。……と思ったらね、あいつ、Putatta(プータッタ)の獲物をかすめとって数を増やしてただけだったんだ。後から見つかって、ポカポカ殴られてたよ。

で、我がウィンダス班はどうだったかっていうと、主役のオレがなぜか不調でさ、朝からずっとお魚さんに逃げられっぱなしだったんだよね。

何時間かしてやっと1匹かかったと思ったら、それがまたでっかい怪物でさ! 冷静に話し合うヒマもなく襲われる始末。結局、冒険者の女の子に助けてもらっちゃったんだけど、やあ、まいったね。

もう釣りはやめにして、その子とお茶でもしようかって思ったんだけど、Vanglaiseが引き留めるんだよな。
写真
“あきらめるのは、まだ早い。今日は満月だぞ?”って。毎度ながら、ほんと気が利かない男だよな。でも、あいつがまた、それっぽいことを言うんだ。

“以前にも増して、新月と満月の日は、魚が活発になっている。餌を求めて海面近くまで上がってくる数も多いはずだ”とかさ。

もちろん釣れるかどうかは腕と運の問題だけど、チャンスは確実に増えてるってことらしい。

オレ、それを聞いたらなんか急に乗り気になっちゃって、しばらくの間、辛抱強く釣り糸を垂らしてたんだ。

そしたら夕方頃からいきなり調子が出てきたわけ! もうね“さすが漁師ギルドに認められたオレ!”って勢いだったよ。みんなにも、大物と戦う勇姿を見せたかったな!

そんなこんなで、各班ともに大騒ぎしているうちに、終了時間がきたんだ。みんなで集まって、いよいよ各班の戦果を集計してみると……。バストゥーク班と2匹差で、オレたちウィンダス班が1位!

バストゥーク班の敗因は、釣った魚をLilliが何匹か食べちゃってたこと。サンドリア班の方は、タルタルふたり組が小競り合いをエスカレートさせて、途中から釣りどころじゃなくなってたってことかな。ま、理由はなんであれオレたちの勝ちさ!

その夜は甲板でね、みんなが釣った「バストアサーディン」や「ネビムナイト」なんかをオレたちが串焼にして、乗り合わせた冒険者のみんなにも振る舞ったんだ。甲板で、満月を眺めながら食べる晩飯は最高だったな。

写真 こんな感じで、釣り大会は、かなり熱かった! オレも、改めて釣りの楽しさに気づいちゃったね。ジュノに戻ってからも精進するぞー!

あのさ、冒険者のみんなは、これからも合成の技を磨いて、きっと一流の職人に成長していくと思うんだ。

でも、ものづくりって決して楽なことじゃないから、どんなに腕のいい職人にだって調子が出ない時はあるはずさ。オレなんて、過去にどれだけの素材をダメにしたか覚えてないくらいだし……。

そこで、オレからの提案! そんな時は、釣竿を手に大自然の中に出かけてみてよ!
憂鬱な気分なんて、あっという間にどこかへ飛んでいっちゃうからさ。

それで、釣りの楽しさがわかってきたら、釣り具を持ち歩くといいよ。
オレも海水用と淡水用に何種類かの釣り具を常備してる。ほら、出かけた先で、どんな魚が待ってるかわからないからね!

もしも、どこかの水辺でオレたちを見かけることがあったら、みんな、気軽に声をかけてよね。 でさ、その時は正々堂々と釣りで勝負しよう!

約束だよ?

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