出来事 冒険者を支える者たち

今や、時代を動かす存在とまで評され、脚光を浴びている冒険者たち。だが、その華やかな活躍の陰には、地道に活動を支える人々がいることを知る者は少ない。彼らにその職務についた経緯、そして冒険者への本音を聞いた。

「よもや、我々大公様の親衛隊が、印形(シグネット)授与の任を負うことになろうとはな」

そうこぼしたのは、親衛隊員のひとりコチャヒムワチャヒ(Kochahy-Muwachahy)さんだった。

彼は三大国の駐在武官に代わってコンクェストに参加する冒険者の支援活動を行うため、最近、ジュノ港に常駐することとなったのだ。

「我が大公国は中立であるが故に、コンクェストの裁定権を有していたはずだ。諸国に属する冒険者たちと我々は、無縁であって然るべきだったのだ。それが、突然のこの任務。これが大公様の御意志だとすれば、時勢が変わったというほかあるまい」

次いで彼から、親衛隊が冒険者を支援することが決定された後の隊員の動揺や、短すぎる研修などの苦労話を聞くことができた。

ただひとつ意外だったのは、そう語る彼の目が、何故か子供のように輝いていて、まんざらでもない様子さえ感じられたことだ。

その理由は、取材の最後に彼が語った言葉で明らかになった。

「冒険者との交流は任務を越え、今や私の生活の一部となっている。だからだろうか、自由奔放な彼らと接していると、私もまるで冒険者として活躍したような気になってくるのだ」

写真 ジュノ国民で冒険者支援のために街頭に立つようになったのは、親衛隊だけではない。上層に同僚とともに立つワイズウルフ(Wise Wolf)さんは、かつて窓口の混雑解消を急務としていた競売所の職員だ。

「お客様の御利用数に対して窓口が少ないことは、以前から私共も問題視しておりました。ただ、その解決法に苦慮しておりましたところ、そのヒントを思わぬ場所で得ることができたのでございます」

“思わぬ場所”というのは、カザムやラバオ、そしてノーグに進出した他国の競売所だった。

「辺境に視察に行った時のことでございます。競売所を覗いた私は、驚きました。あちら様は、満足な施設もない野ざらしの場所に、職員だけを置いて、帳簿とリンクパールだけで競売を運営していたのですから。

おかげで、私も目からウロコが落ちました。同じ方法で、港や、ここ上層にも我々の競売所窓口の代わりが設置できると思ったのでございます。

昨今は、大公様のおかげで治安も良くなったことですし、何も立派な施設を建てる必要もなくなっていたわけですから」

帰国後、彼は所長や大商人の説得に奔走。見事、上層と港に競売所の職員を派遣することに成功したのである。彼は話の最後に最高の笑みを浮かべて、次のように語った。

「最近、気づいたことでございますが、冒険者の皆様と顔を合わせて取り引きさせていただいたほうが、何十倍も仕事が面白いのでございます。なんと申しましても、出品や入札をされるお客様の期待の表情を、直に拝見することができるのでございますから」

最後に、ジュノから遠く離れた辺境の地に冒険者支援の名目で赴任している、あるチョコガールへのインタビューを紹介しよう。

「チョコボって、本当はどこでも走れるんですよ。でも、この子たちがひとりでも帰ってこられるような比較的安全な地域までしか、私たちは貸し出しを許可してないんです」

ラバオでチョコボを世話しているギナヴィ(Guinavie)さんは、そう述べると餌を愛鳥に頬張らせた。

「ですから、コンクェストの範囲が広がってからも、冒険者の皆さんにはしばらく我慢していただいてました。けれど、ようやく辺境地域の安全確認も終わりましたし、この子たちも道を覚えましたので……」

そう語る彼女の笑顔は、とても嬉しそうだった。

「それはそうです。皆さん、この子たちをとても大事にしてくださるし、何より新たな地をチョコボで駆ける冒険者の雄姿が間近に見られるんですから……」

今回、取材に快く応じてくださった方々は、各々まったく別の組織に所属している。しかし、彼らには“冒険者と接することを楽しんでいる”という共通項を見出すことができた。

それは同時に取材した、一部運賃を改正した飛空旅行社の職員や、引っ越し料を廃止したノマドモーグリたちにも、同様に聞かれる意見だった。彼らは、明らかに冒険者と心を通わせているのだ。

責務ある彼らが、冒険者と共に戦うことはおそらくないだろう。だが、労苦をいとわず支えてくれる彼らがいるからこそ、冒険者は世界中で活躍できるのである。
Ainworth

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