出来事 ”限界じいさん”と冒険者

戦いの中で己の“限界”に気づいた冒険者は、決まってある人物を訪ね、その助言に従い、壁を乗り超えるという。

“元気だがイヤミ”と評される彼の元を訪れた冒険者に、その評判を聞いた。

冒険者が直面している壁を見抜き、的確な課題を提示して、彼ら自身の力で “限界”を乗り超える手助けをしているのが、通称“限界じいさん”ことマート(Maat)氏だ。

写真 彼の課題は多岐にわたることで知られている。そのため、冒険者によっては、苦手な場所に行かなければならなかったり、下手すると数ヶ月もかかるようなものを出されたり、と辟易することも多々あるという。

Sudgakingさんも“限界じいさん”の噂を頼りに「ル・ルデの庭」へとやってきた冒険者の1人だ。

「課題を出してくれたのはいいんですけど、そのためには苦手な場所に行かないといけなくて……。マートさんも一緒についてきてくれれば、本当は助かるんですけど……」

彼はクロウラーが苦手なのに、マート氏の課題で「クロウラーの巣」に向かわねばならなくなったことを嘆いていた。きっと文句のひとつも彼に言いたいだろうと思い、尋ねてみたところ、次のような答えが返ってきた。

「あの人がいないと、みんな己の“限界”を超えられなくて、結局は自分が困りますから。これからも彼が試練を与え続けてくれれば……。

これからも(彼に従っていれば)かならず、何かいいことがある……と信じ、耐え抜いてみせます」

彼のように、厳しい課題を自らの成長の糧として受け止め、「師として感謝している」という者は、他にも少なからず見受けられた。

しかし、その一方で、マート氏の挑発的な毒舌に対して、「他に言い方があるだろうに……」といった不満をもらす者や、彼が次々と課す試練に耐えかねて「いつか、倒す……(匿名)」といった悪態をつく者など、彼のことを心よく思わない者も中にはいるようだ。

伝説のドラゴンとも渡りあおうかという冒険者たちから、このような不平が出てくるということは、それだけ彼らに立ちはだかる壁は高く、苦しんでいるということだろう。

果たして、彼らをそこまで悩ませる“限界”を知りつくしたマート氏とは、どれほどの実力を持った人物なのだろうか。

調べてみたが、相当の実力と豊富な人脈の持ち主であること以外、残念ながら彼の経歴を知ることはできなかった。無論、直接本人に聞いても、はぐらかされてしまうのがオチだろう。

しかし、たとえ彼の正体が何者であろうとも、壁に直面した冒険者は“限界じいさん”を訪ね続け、そしてマート氏は彼らに、イヤミ混じりの助言を与え続けていくに違いない。
特派員 : Across / Phoenix

戻る