先日、突如として3国の近郊に送りこまれた巨大な怪物は、冒険者たちの団結によって速やかに倒され、獣人の陽動作戦は未然に阻止された。
冒険者たちの活躍を大きく評価した各国は、特産品流通組合に働きかけ、移動魔法による組合独自の輸送法を、報酬として一定の期間、冒険者にも利用できるように手配した。
はたして冒険者達は、この報酬について、どう思っているのだろうか?
組合から派遣された魔道士を取り囲んで、瞬間移動の順番を待っている冒険者たちに聞いた。
「自国領以外へは有料とはいえ、これは安い。冒険者が使う魔法では行けない所にも行けるし、とても便利だね」
「今から各国に散っている仲間と現地集合して狩りに出かけます」
「釣りに行くところです。普段は行けないような場所で釣ってみようと思って……」
「期間限定と言わず、ずっと続けてほしいサービスですね」
彼ら冒険者は皆、口を揃えて組合員の登場を喜んでいた。
では、副業でテレポ屋を営んでいた白魔道士たちの反応はどうなのだろうか。気になって、早速取材してみたところ、意見は慎重派と歓迎派に大きく分かれた。
各々代表的な意見を紹介しよう。
【慎重派 Blackjack氏】
「特産流通品組合のテレポですか? 困りますね……。商売あがったりじゃないですか。僕はお客さんの言い値でサービスしていましたが、提示される運賃の相場は500G以上でした。それが値下がりしたり無料になったりするかと思うと……」
【歓迎派 Fancy氏】
「とても便利になりましたね。ヴァナ・ディールに新しい動きがあることは、なんであれ冒険者にとってよいことだと思います。どんなできごとも乗り越えて、モノにしていくのが私たち冒険者の仕事でもありますし。いろいろなことに利用したいと思います」
歓迎する者、困惑する者、冒険者が成し遂げた偉業に対する報酬は、各方面にさまざまな反響を与えたようだ。
ところで、取材中、多くの冒険者たちが特に気にしていたことがあった。それは、このサービスが“期間限定なのか”ということだ。
この疑問について、ベテラン冒険者であるSouji氏は、鋭い見解を披露してくれた。
「以前、3国合同の“獣人撲滅キャンペーン”というのがあったよね。その時、期間限定で他国の官給品が入手できてたんだけど、結構好評でね。後日、公式な制度として採用されたっていう前例がある。今回のサービスも期間限定ということだけど、これだけ好評だとひょっとして……」
なるほど、一理ある。
ともあれ、私も筆を置いたら、この期間限定の移動魔法でザルクヘイムへ飛び、セルビナから船釣りに出かけるつもりだ。
特派員 : Myhal / Gilgamesh