記事 おばけが街にやってくる!?


3国の街の者たちで、子どもたちや冒険者のための新しい祭りを開催しようと計画しています。北サンドリアでは、明日と明後日の晩に予行演習を実施する予定ですので、ぜひ取材にいらしてください。

ジュノ近郊の農地が揃って作物の収穫を終えた日、編集部に1通の手紙が届いた。送り主は、北サンドリアに住むエルヴァーンの男性だった。

取材を任された記者は、飛空旅行社に走り、当日の午後の便でサンドリアへ飛んだ。

北サンドリアでは、予想だにしていなかった異様な光景が出迎えてくれた。世にも恐ろしいおばけの一行が、街を駆け回っていたのだ。

脅える記者の目の前を、大鎌を手にした骸骨や、エルヴァーンの亡霊、それから空中を浮遊する黒い影が次々と通り過ぎていく。

工人通りの門に立っていた衛兵に、いったい何が起こっているのか、と尋ねてみても、「異常なーし」と繰り返すばかり。もっとも、私語を禁じられていただけなのかもしれないが……。

状況がつかめず不安を募らせていた時、1人のエルヴァーン男性が姿を現した。手紙の送り主だった。

「よくぞいらっしゃいました。おばけだらけで、驚かれたでしょう? これが例の祭りの予行演習なんですよ。さあ、遠慮なさらずに、どんどん取材してください」

おばけたちの正体が街の人々であることにやっと気づいた記者は、彼らと並んで通りを走りながら話を聞くことにした。
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――こんばんは! いやいや、本当に驚いてしまいました。その姿、まさに骸骨そのものですね!

「はは、すごくリアルだろう? この衣装には苦労したんだよ。わざわざエルディーム古墳まで行って、実物を拝んできたくらいだからね」

何ということだろうか。街の人々は、祭りを成功させたい一心で、決死の大冒険まで敢行していたのだ。

――そちらの方もずいぶん本格的な仮装ですが、新しい祭りというのはそもそも何を祝う日なのですか?

「お隣の奥様には、この1年の収穫をお祝いする日だと伺いましたわよ。詳しいことは存じませんけど、新しくやってきた冒険者さんから伝えられたお祭りなんだそうですわ。お祝い事なのにどうしてこんな格好をしているのか、ですって?……細かいことは気になさらないで!」

同じ質問に対して、ある夫婦はこう答えてくれた。

「そりゃ、各地からきたばかりの冒険者たちに、それぞれの街に慣れ親しんでもらうための祭りだろう?」

「それがね、あなた。ただのお祭りじゃないらしいの。何でも調理ギルドが裏で糸を引いてるって話よ」

「おまえ、またウィンダスの義姉さんに吹き込まれたんだな? あの人の話をいちいち真に受けるなって」

この祭りの起こりについては彼らの間でも諸説が飛び交っていて、確かなことはわからずじまいだった。

――ところで、おばけの仮装をしたみなさんは、今回の祭りではどんな役どころなんですか?

「そうね、簡単に言うと、みんなを怖がらせる役ってところ。もちろん、喜ばれることだってするつもりよ」

エルヴァーンの亡霊になりすました女性は、意味ありげに笑った。

――当日みなさんに会ったら、どうすべきですか? 読者に向けて、ヒントをお願いします。

「ヒント? そうだなあ。慌てて逃げ出したりしないで、僕らに何かを手渡すことだね。へへ、何がもらえるのか、今から楽しみ……」

ゴーストに扮した少年は、そう言った途端に腹を鳴らし、仲間たちを笑わせていた。

彼らの様子を満足そうに眺めていた手紙の送り主は、こう語った。

「当日は、1人でも多くの方に、おばけたちとの交流を楽しんでいただきたいものですね」

祭りの開催は、間近に迫っている。里帰りを兼ねて、3国の街に足を運んでみてはいかがだろうか?
Nolvillant

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