真っ赤に熱した鋼を槌で鍛える音が絶え間なく鳴り響く、ほの暗い一室。炉の中で踊る炎が、職人の顔を煌々と照らす。
日々の戦いとは一味違った熱気を感じられる場所。それが鍛治ギルドである。
ギルドの工房では、数多くの優れた武具が生み出され続けている。
冒険者達のあらゆる要望に応えられるようにと、職人達は腕磨きに余念がない。
物作りにおいて、手を抜く事は許されない。たとえ失敗しても、それを嘆く暇はない。厳しい職人の道を選んだ彼らは皆、もう一つの戦場に生きているのだ。
そんな職人の姿に憧れてか、新たにギルドの門を叩いた冒険者がいる。
サンドリアの鍛治ギルドにいたCrasherさんは、徒弟と呼ばれる新米職人。羨望する先輩職人に少しでも近づくために、彼女は武具作りに取り組んでいた。
作業に苦戦しながらも、彼女は「いつかは自分なりの効率よい作り方を編み出してみたい」と、意気込んで語ってくれた。
かたやOzuさんは、手始めに1日だけ鍛治を体験してみたという入門者だった。
彼は実際の作業工程の難解さに驚いたようで、「今後この道を選ぶかどうか、一度じっくり思案したい」と、真剣な表情で話していた。
Ozuさんが肌で感じたとおり、鍛冶の技術は一朝一夕で身につくようなものではない。名剣を鍛えられるほどの職人となれるのは、人知れず地道な修行を積んだ者だけなのだろう。
それでは、彼らの目指す先輩職人の仕事ぶりとは、いかなるものなのか? 幸い、2人の職人から話を聞くことができた。
目録のYanronさんは、無数の試作品の山に埋もれて修行に打ち込んでいた。
既に鍛冶ギルドに目録と認定されている彼の目標の一つは、いつか自分の作った鎧を知り合いの騎士に着せてあげる事なのだという。
鍛冶の後輩達に対してメッセージをもらいたいと頼んだところ、Yanronさんはこう語ってくれた。
「ゆっくり楽しんでやってもらいたいですね」
経験豊富な職人ならではの、度量の大きさをうかがえる言葉だ。その一方で、職人としての自分に対しては厳しく、彼はこのように述べた。
「道程は、まだまだ果てしなく長いです」
それでも続けていこうと思えるのは、やはり鍛冶の世界が好きだからだという。
ところ変わって、バストゥークの大工房。鍛冶ギルドの扉を開けると、そこには2人の冒険者の姿があった。
片方のガルカは職人のようで、その場に膝をついて、何かを製作していた。もう片方の冒険者は、彼の顧客らしい。
ガルカの職人は、声をかけるのもためらわれるほど作業に没頭していたが、しばらくすると立ち上がって、真新しい作品を依頼人に手渡した。その仕上がりに、依頼人はご満悦の様子だった。
一仕事を終えたばかりのガルカの職人ことUzeeさんに取材を申し込んだところ、彼は応じてくれた。
これまでずっと鍛治一筋で頑張ってきたという彼だが、前線で活躍する冒険者達から武具などの製作依頼がくるようになったのは、つい最近の事だそうだ。
「お金を稼ぐことより、さっきのようにオレの作った装備を喜んで着てもらえることが嬉しいです」というUzeeさん。
彼が依頼人を満足させるだけの確固たる技術を備えていることは、素人目にも明らかだ。それでも本人は、「上には上がいますから」と言って、先達を讃えた。
出会った職人達の多くは、こんなふうに謙遜して語る。それは、己の腕に満足することなく、さらなる高みを目指そうとする、彼らの精神の現れなのかもしれない。
耳を澄ませば、今日も、鋼を鍛える小気味よい音が聞こえてくる。鍛冶ギルドの工房の奥で、職人達が無心に槌を振るっているのだ。
特派員 : Mizakura / Quetzalcoatl
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