昨日は宝石商の小箱に潜み
今日は貴婦人の薬指を飾り
明日は貧者の命を助く
求むる者へと渡りながら
内なる声聴く主を探す
ひとつの紅玉があると云ふ
その名を“カーバンクル”
赤き血潮 流るる石
昨日は街の水路を流れ
今日は干潟の砂に埋れ
明日は森の朽葉に眠る
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海や陸を流離いながら
運命の糸ひく主を待つ
ひとつの紅玉があると云ふ
その名を“カーバンクル”
夕映えの色 留むる石
昨日は烏巣の卵間に光り
今日は魔物の片目に輝き
明日は少女の胸元を彩る
獣や人に愛でられながら
優しき心の主を試す
ひとつの紅玉があると云ふ
その名を“カーバンクル”
七色の光 秘めたる石
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