今や時代を担う存在となった冒険者。そんな彼らのようになろうと、志願する者はあとを絶たない。しかし、昨今の急激な新米冒険者の増加は、さまざまな方面に影響を与えることとなった。

特に顕著だったのが、コンクェストにおける勢力図の激変だ。いくつもの地方が獣人勢力の猛攻に敗れるという悲劇が起こったのである。

「わずかな期間で地方が大変なことになってて驚きました」

「(獣人勢力が)今までの常識を打ち破る勢い!」

まだ戦い慣れない冒険者が増えたことに気づいた獣人勢力が、チャンスとばかりに攻勢に転じてきたのだ。

また、冒険者急増の影響は、彼らの生活全般にも及んだようだ。

「装備が珍しいのか、どこを歩いても注目されて、はずかしかった」

この意見に代表されるように、ほとんどのベテラン冒険者は、後輩たちの意外な行動に戸惑いを隠せない様子だった。冒険者生活の長いGuttiさんは、彼らの行動について、こう冷静に分析していた。

「彼らの多くは情報が不足しているようです。己の力量に見合った敵の選択や戦術など、これまで冒険者たちに培われてきた知識が、うまく伝わってないのが原因でしょう」

確かに、Guttiさんの言うとおりなのかもしれない。

では、ベテラン冒険者が彼らにしてやれることは何かないのだろうか?

そう考え、後輩たちの支援や指導を積極的に行っている者たちがいる。

その中の1人、Ppeさんは、情報の提供を重視し、彼らの疑問解消や質問の応対に努めている。今では堂に入った指導をするPpeさんも、始めの頃は戦術の基本を教えるのにさえ、手を焼いたとのこと。

「出会った頃の彼らは、全員で行軍しながら、見つけた敵に手当たり次第、何の戦術もなく突撃していくという戦い方をしていましたので、正直驚きました。結局、各人の役割分担を説明することから始めたんですよ」

Ppeさんも実戦に立ち会い、戦術を比較しながら指導することで、彼らはみるみる上達したそうだ。

また、新しくリンクシェルを購入して、彼らと共に冒険を楽しみながら支援する、Willtopowerさんのような冒険者もいた。

冒険資金を稼ぐ手段を知ってもらおうと、釣り竿をプレゼントして一緒に釣りに出かけるなど、まるで二人三脚のように親身な指導が特徴だ。

彼の活動は、冒険に関する知識の提供から食料や物資の支援まで多岐にわたっている。それでいて、最後には彼らだけで助け合って冒険してもらおうと「未開封リンクシェル」を提供するなど、細かいところにまで気配りも行き届いていた。

「甘やかしすぎと思われるかもしれませんが、自分はきっかけを提供しているだけなんです。そこから得たものを活かせるかどうかは、本人たち次第ですからね」

彼の指導を受けた元新米冒険者は、明るく感想を述べてくれた。

「冒険を始めた頃、周りにノウハウを教えてくれる人がまったくいなくて困っていたんだ。彼のような親切丁寧に教えてくれる人物と出会えたボクは、とてもラッキーだったよ」

彼らのほとんどは、今では自分なりの冒険のスタイルを確立させ、ジュノを拠点に活躍しているそうだ。

最後に、Willtopowerさんはこう語った。

「新米の頃に助けられた人は、将来立場が変わった時に、同じように新米を助けてあげられる冒険者になると信じています。そのためにも、まず自分たちがそれを示すことが大切だと思います」

先を見据えた彼の言葉が示すように、今はまだ芽が出ていない冒険者達もやがては成長を遂げ、頼もしい仲間として共に戦う日が来ることだろう。

特派員 : Storm / Kujata

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