私達が生きていく上で欠かせない食物。それを美味しい料理として提供してくれるのが、調理人である。

彼らは、その素晴らしい技術をいかにして磨き、また活かそうと考えているのだろうか。

調理人として活躍する職人冒険者達に会うため、私はウィンダス水の区にある調理ギルドを訪れた。

ギルドの前で調理人を待っていると、タルタルのRukahさんとエルヴァーンのPharisさんが近づいてきた。さっそく、調理人を探している旨を伝えたところ、彼らはそそくさと立ち去ろうとする。聞けば、調理を経験したことがないという。

とはいえ、ここで会ったのも何かの縁。そう思って、調理を体験してみてはどうかと提案したところ、彼らは顔を見合わせてうなずいた。

こうして、調理ギルドの門を叩いた2人が最初に挑戦することになったのは、最も簡単な料理のひとつ「野兎のグリル」だった。

まず慎重に材料を確認し合い、次に炎のクリスタルを手に取って完成品のイメージを強く念じる。すると、肉の焼けるよい香りが漂いはじめる。

記念すべき第1作目の完成だ。

「おいしいー!」

2人は満面の笑みで、あつあつのグリルを頬張った。どこにでもある料理には違いないが、彼らにとっては世界でいちばん美味しいグリルだったのだ。すっかり“味を占めて”しまった2人は、それぞれの夢を語ってくれた。

Rukahさんは「調理の道を極めてみせます!」と胸を張った。Pharisさんは「自分で焼いた串焼で力をつけて戦いたいです」と言って、グリルの最後のひと切れを口に入れた。

どんな道であっても、極めるためには多くの時間と鍛錬を要する。だが、その道程には、自分の足で歩む者にしか味わえない多くの喜びもあるだろう。私は、晴れて出発点に立った2人の調理人を、心から応援した。

次にギルドを訪れたのは、すでに高弟の資格をもつTsukitoさんだった。彼に調理の醍醐味について尋ねたところ、食材をテーマに語ってくれた。

素人の頃から、彼がずっと頭を悩ませてきたのが食材の調達。獣人達が勢力を伸ばす昨今では、地域固有の特産品が市場に出回らなくなったりもするため、ときには、ひとつの料理のために世界中を駆け回ることもあるという。けれども、料理を美味しそうに食べてくれる人の笑顔を見られることを思うと、そのような労苦は吹き飛んでしまうそうだ。

彼の取材を終える頃には、他の調理人達も集まってきていて、ギルド前の縁台には、自然と語らいの輪ができていた。

Gallveさんは、想像力の豊かな人物で、オリジナルレシピの構想について語り、隣で相槌を打っていたNatsさんは、見たこともない創作料理を想像して喉を鳴らした。

Evityuさんは、もっぱら趣味の釣りで使う釣餌を作っているそうだ。大物に挑む前には、まず小魚を釣り、それをさばいて餌にするとのこと。同じくFoxtailさんも、初めのうちは釣餌を作っていたらしいが、食べられる料理にも挑戦しようと思い、調理ギルドまでやってきたそうだ。

「タルタルの唐揚げも得意だ」などという冗談で皆を笑わせていたGagmanさんは、ガルカでありながら魔道士として戦っているため、常にジュース類を欠かさないという。この大きな調理人を見上げていたら、ふと、その昔父が作ってくれたワイルドな料理の味を思い出した。

無駄の出ないやりくりの仕方、料理を格別に美味しく作る方法、材料を調達するのに適した場所についてと、彼らの語らいは夜更けまで続いた。それを聞いて「自分も、皆のように料理を作ってみたくなった」と、つぶやいたPotoさんを、調理人達はおおいに歓迎した。

この夜は、いつも口にしている料理まで、やけに美味しそうに見えた。

それは、調理人達が隠し味に使っている“夢”や“真心”という名の調味料の存在に、私が気づかされたからかもしれない。

特派員 : Myhal / Gilgamesh

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