ジュノ大公の執政場オーロラ宮殿の敷地内で、黙々と格技の稽古を続ける謎の人物マート(Maat)氏。実のところ彼は、知る人ぞ知る伝説の闘士であり、精鋭を誇る大公親衛隊にも師と仰がれているそうだ。

しかし、彼の与える試練に常々悩まされてきた冒険者となると、その評価は一変。多くが、彼に対して複雑な感情を抱いているらしい。

事実、彼の名前を出した途端に「無理難題ばかり突きつけてくる、困ったじいさん」と渋い顔をする者が多い。いや、そればかりではない。中には、こんな野望を胸に抱く者までいるくらいだ。

「いつかこの手で、あのじいさんを倒してやる……!」

彼らの心の叫びに誰よりも早く気づいていたのは、他でもないマート氏だった。そして彼らの挑戦を受けて立つべく、マート氏は自らが見込んだ屈強な冒険者に対し、究極ともいえる試練を与えたのである。

「ワシとサシで勝負してみようではないか?」

遂に、夢にまで見た“その時”がきた――。 冒険者の間に衝撃が走った。

以来、マート氏のもとには続々と挑戦者が訪れ、死闘を繰り広げているという。

果たして、因縁の対決を終えし者たちは何を思うのか? その戦いに何を見いだしたのか?

本紙フィンリーン(Finleen)記者が聞いた勝者の叫びを、ここに紹介しよう。

「積年の恨み、思い知ったか!!」
― 戦士 : Dainslefさん / Asura

「次は降参なんてさせねぇ!
ノックアウトしてやるぜぇぇえ!」
― 白魔道士 : Wakaさん / Ramuh

「これで赤魔道士を続けていける!」
― 赤魔道士 : Ereneさん / Bismarck

「やられる前にやれ!」
― シーフ : Gsanさん / Ramuh

「バイルエリクサー万歳!」
― ナイト :Kaichanさん / Ramuh

「アビリティの使いどころは押さえておこう!」
― ナイト : Ellenoyleさん / Asura

「正直、腹が立つこともあったけど、私に何が足りなかったのかを教えてもらいました」
― 暗黒騎士 : Yukineさん / Ramuh

「おじぃぃぃぃぃちゃぁぁん! あり がとぉぉお!」
― 吟遊詩人 : Viennaさん / Ramuh

「Maatさんとデュエットできたことが嬉しかったです!!!!!」
― 吟遊詩人 : Legorasさん / Ramuh

「緊張のあまり装備を間違ったまま戦ったのは内緒……」
― 狩人 : Mnickさん / Fenrir

「文字通り、紙一重の勝利でした」
― 狩人 : Sioさん / Ramuh

取材に応じてくれた彼らは、いずれも自らの限界を超えて試練を克服した真の実力者ばかり。ところが、そんな彼らのほとんどが、初戦でマート氏の技に惨敗を喫した苦い経験を持っているというから驚きだ。

マート氏の力は、推して知るべし。

やはり、ただの“イヤミなじいさん”などではなかったのだ。

冒険者とマート氏の直接対決の噂は、遠くバストゥークまで届いていた。商業区の片隅で格技の稽古に励んでいた老年の男性デーゲンハルト(Degenhard)氏は、興奮気味に語った。

「マートの奴め、今でも現役でブイブイ言わせとるんか。それにしても、奴と互角に渡り合う強者がいるとはあっぱれだ。ええい、わしとて負けてられんわい! ほっ! ほっ!」

今から数十年前、マート氏と同じ道場で稽古に励んでいたという彼は、マート氏の謎めいた過去を知る数少ない人物といえよう。

彼にとってマート氏とは青春時代のよきライバルであり、同じ夢を追い、苦楽を分かち合った、かけがえのない存在でもあるという。

過去に幾度となく拳を交えてきた2人の老闘士――。

今は遠く離れた街に暮らしていても、彼らはかつてと同じように己の肉体を磨き、そして、若き後継者たちに同じ夢を託しているのかもしれない。

取材 : Finleen / 文 : Nolvillant

戻る