街を飾るイルミネーションで人々が和やかなムードに包まれたのも束の間、以前4国に贈られて夜をにぎわせたツリー(Twirkling Treant)が各地に出没して暴れだすという事件が巻き起こった。

新たなツリーの登場で、お払い箱となったあのツリー達は、寄贈者であるウィンダス鼻の院に返却され、焼却されるのを待っていたらしい。

事態を収めるために冒険者の協力を要請した鼻の院は、「まとめて処分しようと思って放っておいたら、野生に戻って、モソモソ動きだしちゃったのだッペ!」と説明していた。

この珍事取材のため、街の周辺から調査を始めた私は、すぐにその現場を目撃することができた。

装飾された枝を揺らしながら暴れ回るツリーと、それを取り囲む冒険者達。

宝石のような美しさとは裏腹に、ツリーは計り知れない強さを見せていた。立ち向かう冒険者達が、次々となぎ倒されていく。

「本当に倒せるのだろうか?」

討伐に参加した冒険者の中からもぽつぽつと不安の声が上がり、全員に疲れが見えはじめた頃だった。

突如、辺りに叫び声が響いた。

ツリー討伐の仲間を募るため、専用リンクシェル“TreeSweepers”を立ち上げたTaxmanさんの声だった。彼は、ツリー討伐の要請にいち早く応じ、冒険者達の力をまとめるために立ち上がった1人だ。

次々と冒険者が彼のもとに集い、強力な部隊が編成されていく。そこでは情報や意見が常に飛び交っている。

「一気に連携技を叩き込めば、いけるんじゃないのか?」

「多人数で連携は難しいから、個々に全力を出し切るのが一番かも」

「黒魔法で一斉に攻撃するのはどうだろうか」

様々な提案をもとに、彼らは試行錯誤しながらも、それぞれが持てる力のすべてを注ぐ。少しずつだが、ツリーの体力も削られているようだった。

そして、戦場を離れた場所でも、この戦いに勝利するために、様々な形で活躍する者達がいた。

Taxmanさんは、更なる仲間を集めるためにジュノに飛び、呼びかけを続けていた。新たに加わった仲間を、彼に同行したPascalさんが、移動魔法で各地に送る。白魔道士の彼は、こう語っていた。

「回復や治療だけでなく、白魔道士である自分が、今できることを精一杯やっているだけ」

彼らの働きが実を結んだのか、いつしかツリーの周りは冒険者で溢れかえっていた。

その傍らに、1ギルという破格の値段で野兎のグリルを売り歩くKirinjiさんの姿があった。

「僕の作った料理が、少しでもみんなの役に立てばと思いまして……」

冒険者達は、彼の話を聞いている間にも、焼き立てのグリルをかじりながら、次々に前線へと向っていく。

冒険者達の猛攻にさらされながらもツリーは必死の抵抗を続けていたが、一丸となった彼らの前に、その無限とも思われた体力もついに尽きる時が来た。

その巨体が崩れ落ち、あたりには歓喜の声が響きわたる。

花火を打ち上げる者や思わずガッツポーズをとる者、踊りだす者。皆が勝利の喜びを分かち合い、互いの健闘を讃え合った。

「最初はダメかと思いました。でもだんだんと、みんなの息が合ってきて、それが何だか心地良かった」

メンバーの1人、Mineさんは感極まった様子で語っていた。

彼らと同じように、各地で戦っていた冒険者達の活躍で、やがてすべてのツリーは討伐された。

最後まで気を緩めなかったAssassinさんは、「全部のツリーが討伐されるまで安心できず、各地を駆けまわった」と、安堵の表情を見せた。

「怪樹、討伐さる!」の報を受け、冒険者達の活躍を大きく評価した各国は、彼らにも特殊な移動魔法を利用できるようにした。特産品流通組合に対して働きかけたのである。

それに喜んだRottanさんは、嬉しさのあまり早速サービスを試し、遠方の地へ移動した瞬間に、改めて自分達の功績を実感したという。

最後に、リンクシェルのリーダーを務めたTaxmanさんに、この激戦を振り返っての感想を聞いた。

「私達は引き金を引いただけに過ぎません。参加したすべての人の勝利です」

彼の言うように、この輝かしき勝利に特別な英雄は存在しない。参加者全員が結束したからこそ成しえた偉業なのである。

特派員 : Storm / Kujata

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