ジュノに暮らしているみなさんならば、ル・ルデの庭の片隅で花を売る、かわいらしい商人を見かけたことがあるのではないだろうか。

そう、ミスラのダビィ・ジャジャリオ(Dabih Jajalioh)ちゃんのことである。

まだあどけない少女とはいえ、彼女はM&Pマートから派遣されてきた立派な販売員だ。M&Pマートといえば、上層の時計塔近くにある有名雑貨屋。エルシモ島のカザムにも支店があるという。この店の看板を背負って、ダビィ・ジャジャリオちゃんは毎日懸命に働いているのだ。

そんな彼女のひたむきな姿は、街の人々を元気づけているらしく、最近では熱心に通い詰めるファンまでいるとか、いないとか。

さて先日のこと、ダビィ・ジャジャリオちゃんに関する話を、ある冒険者の男性からたまたま仕入れることができた。どうやら最近、彼女が花以外の商品を扱いはじめたというのだ。

このところ彼女の店に立ち寄る機会を逸していた記者は、様子見がてら取材することにした。

上層からル・ルデの庭へ入り、競売所近くまで足を運ぶと、階段の下から聞き覚えのある元気な声が聞こえてきた。

「いらっしゃい〜。M&Pマートのお手伝いのバイトなのにゃ。かってくださいにゃ」

ふと、こちらに気づいて大きく手を振ってくれた彼女に、記者も思わず手を振り返した。

階段を駆け下りた記者は、早速気になる商品を見せてもらった。確かに増えている。こちらから尋ねる前に、彼女は嬉しそうに話しはじめた。

「あのね、おきゃくさんがいっぱいかってくれたから、店長さんが品ものをふやしてくれたのにゃ。とってもうれしいから、ボクもっとがんばるにゃ!」

その健気さに心を打たれた記者は、ライラックを1輪、それから入荷されたばかりの「オニカボチャ」を1つ買って帰った。

翌日、彼女の雇い主に話を聞くために上層のM&Pマートを訪れると、店主のシャンパルピーユ(Champalpieu)さんはこう語ってくれた。

「とにかくあの子は、お客さんと接するのが嬉しくてたまらないようですよ。だから、どんなに寒い晩でも誰かが来てくれることを楽しみに、あの場所に立っているんです。あんなに幼くても、気持ちだけは一端の商人なんでしょうか」

取材を終えた記者は、編集部に戻る前にダビィ・ジャジャリオちゃんのところへ走った。

いつものライラックを買って、そのまま少し離れた場所で様子を見ていると、冒険者が何人か訪れ、彼女から花やカボチャを買っていった。彼らを笑顔で見送った彼女は、大きく息を吸い込んで叫んだ。

「いらっしゃいー! M&Pマート出張露天販売所なのにゃ。かってくださいー」

夕暮れ時のル・ルデの庭に、ひときわ元気のいい声がこだました。

彼女は、たくさんの人々に支えられながら立派な商人として成長していくことだろう。その様子を、いつまでも温かく見守っていきたいものだ。

Rirukuku

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