その日、久しぶりに帰郷した冒険者が、様変わりした街の風景に目を奪われた。そして、首をかしげた。

“今度は、何がはじまったんだ?”と。

薄紅色の花をつけた街路樹。折りたたみ式のスクリーンである“屏風”や3色の対比が鮮やかな菓子“菱餅”といった東方風の産物。

この、木工ギルド、調理ギルド、鼻の院のコラボレーションによって実現した催しは、“Hina-Matsuri”と呼ばれる、東方発祥のものだった。

ところで本来の“Hina-Matsuri”は、どのような意味をもつ祭りなのだろう?

見聞の広い冒険者たちの話を収集すれば、その全貌がつかめるかもしれない。そう考えた編集部は、事情通といわれる冒険者へのインタビューを行うことにした。

「偉い人のなにかをお祝いするお祭りだって聞いたけど?」
― Kenpiさん / Lakshmi

「ヒナのまつりでしょ? チョコボとかのヒナが、でかく育つように祈るんでしょ」
― Kityoさん / Ragnarok

「“もものせっく”です! “ひなだん”にお人形をかざって女の子の健勝を祝うです! お祭りが終わったあとまで、ずっとひなだんを出しっぱなしにしておくと、なかなかヨメにいけなくなるです。たいへんですよ!」
― Gerugeruさん / Bismarck

「女の子が生まれた家で、嫁入り道具を模した品物を飾るお祭りだというふうに聞いたことがある」
― Asaichiさん / Lakshmi

その他、多くの冒険者の情報を集めた結果“Hina-Matsuri”とは、次のような祭りであることが判明した。

女児の厄除けと健康祈願を目的とした祭りで、本来は3月3日に行われるものである。また、“桃の節句”とも呼ばれるらしい。

そのための祭具として、東方装束の貴族の人形やミニチュアの調度品などを、菱餅や桃の花などと共に飾るのだそうだ。

そこで、新たな疑問が生じた。

果たして我々が目撃した“Hina- Matsuri”は、オリジナルの祭りを再現できていたのだろうか?

結論を述べれば、残念ながらオリジナルの“Hina-Matsuri”とは大きな違いがあることが分かった。いや、「大きさの違い」と表現する方が正しいかもしれない。

オリジナルの祭りでは、人形は片手で持てるサイズのものが用いられるはずが、誰がどう勘違いしたのか“Hina-Matsuri”では舞台が何倍ものスケールとなった上、なんと人間が飾られることになってしまっていたのだ。

とはいえ、皆を楽しませるために企画されたこの催し。その意図だけは冒険者にも、しっかりと伝わっていたようである。

「屏風の前に一番親しい方と座りましたです。不思議なもので、懐かしい思い出が浮かんできたり……。時が過ぎるのを感じながら、これまでの冒険で助けてもらったことに感謝しました」
― Poppelさん / Garuda

「楽しんだ……のかは分からんのですが、バストゥークに戻った時に見た桃色の花。ありゃ非常に素晴らしい! 食い物もあったんだけど、やっぱりコレが一番だったなぁ」
― Greywolfeさん / Caitsith

街路に舞い散る、薄紅色をした無数の花びら。その雅やかな光景は、すでに皆さんの目を楽しませたことだろう。

取材 : Finleen / 文 :Zenngg

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