パーティ戦における冒険者たちは、選択したジョブによって、“前衛”と“後衛”に大別して語られることが少なくない。

前衛と後衛の担う役割が違うとすれば、それは、かばんの中身にも現れているのではないか? そう予想して、今回はそれぞれの傾向について調査することにした。

なお、いくつかのジョブは冒険者の間で“中衛”と呼ばれることもあるが、ここではパーティ戦において主に武器による攻撃を得意とするジョブを前衛、主に魔法を使うジョブを後衛として話をすすめようと思う。
また、ご紹介するのは、あくまでも今回のインタビューにおいて得られた結果であることを、ご承知いただきたい。

冒険者たちのかばんに入っていたものとして、まずは食べ物からご紹介しよう。

前衛のかばんに最も多く見られたのは、大方の予想通り「ミスラ風山の幸串焼」。それについで、「族長専用山の幸串焼」、「ミスラ風海の幸串焼」という結果だった。

常時2種類以上の食べ物を持ち歩いていると回答した人も少なくなかった。これは、戦況に応じて、あるいはパーティでの自分の役割によって、それらを食べ分けていることを意味しているのだろう。

一方で後衛は、その大半が決まった食べ物しか持ち歩いていなかった。しかし調理の修行を積んでいる人に限っては、好みのジュースの素材を持ち歩いていた。

彼らの話によると、必要なとき、必要な分だけジュースを絞り、魔法詠唱で乾いた喉を潤したり、仲間にふるまったりしているのだという。

「戦闘中に暇を見つけてジュースを絞ることが多いですね。ナイトなどの魔法を使える前衛さんにお裾分けすると結構喜ばれるんですが、実はこっそり調理の腕もあがって自分のためにもなるから、楽しいですよ」

とは、インタビューに応じてくれた白魔道士の話である。

ちなみに、獣を呼び出して戦える獣使いはというと、汁や餌など、いかにも獣たちが喜びそうなものを、かばんにたくさん詰め込んでいた。

食べ物のほかにも、戦闘時に役立つ補助的なアイテムは多数存在する。

敵を発見した際、遠隔攻撃や投てきを駆使して戦いを仕掛ける前衛は意外に多い。そのため前衛のかばんの中にはメインで使う武器のほかに、矢や弾、投てき武器が入っていることがあった。もっとも、補充を忘れてしまうことも、ままあるらしいが。

補充を忘れてしまうとまずいものといえば、やはり薬品かもしれない。

高ランクの前衛においては、敵に感知されないようにするために使用する「サイレントオイル」や「プリズムパウダー」が必携薬品として上位に挙がった。後衛においては、静寂状態を治療する「やまびこ薬」や、様々な状態変化に効く「万能薬」といった治療のための薬品が目立った。

ところで、冒険者とは戦闘を重ねるにつれて、より優れた装備品を求め、より高度な魔法を習得しようとするものである。ゆえに冒険者たちは、近い将来使えるようになるものを、 かばんに入れていることが多々ある。

実際、前衛のかばんには、数種類の真新しい武器が収められていた。どのような連携にも対応できるようにと、日頃から複数の武器を使いわけている彼らは、来るべきときにそなえ、新しい武器も複数準備しているらしい。

その点、後衛は、前衛と違ってまだ使えない武器を前もって持ち歩いているとは限らなかった。それは、武器よりも近々習得可能となるはずの魔法スクロールを最優先しているためである。

いずれにしても、より上級者向けの装備品や魔法スクロールは、冒険者たちの備えであるとともに、目標や励みになっているのかもしれない。

冒険者のかばんには、さらに興味深いアイテムも入っていた。それは、緊急避難用の「呪符デジョン」だ。

「呪符デジョンは、僕たちシーフにとっては、必需品といってもいいんじゃないかな。職業柄、宝箱を探す機会が多いんだけど、危険な場所にある宝箱をあけたり、開錠に失敗したりで、結構危ない目に遭っているからね。そんな万が一のときでも、呪符デジョンをうまく使えば、安全な場所へ逃げられるんだよ」

そう答えてくれたシーフは、「使ったらすぐまた補充しておくのが肝心だ」と、つけ加えてくれた。

この「呪符デジョン」は、シーフに限らず、ほとんどの前衛が持ち歩いていることがわかった。だが、魔法で移動や脱出することができる後衛には非常時の保険アイテムと受け止められているのか、前衛ほど所有率は高くなかった。

最後に、もうひとつ、意外な事実をご報告しよう。

食べ物や数々の武器、魔法スクロールから薬品まで、冒険者がかばんに詰め込むべきものはたくさんある。さぞかし中はぎゅうぎゅうなのかと思いきや、驚くほど整理されていた。

そればかりか、かばんの中には、できる限りのスペースがつくられている。それは戦いの場で得た戦利品、すなわち明日の冒険の糧を、いっぱいに詰め込んで持ち帰るためだった。

必要なものを備えつつ、いかにして少しでも多くの空きを確保するか。冒険者たちは、そこに様々な工夫を凝らしていたのだ。

知れば知るほど奥深い、冒険者のかばん。以後も別の角度から、かばんに関する調査を続けてみたいと思う。

特派員 : Palulu / Siren

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