いつもは仲間と連れ立って出掛ける冒険者でも、かばんを背負い、ひとり街の外に出ることがある。その理由の1つが合成のための素材集めだ。

売れ筋の武器を作るにも、人気の料理を作るにも、様々な素材が必要になる。その調達方法もまた様々で、モンスターを狩って皮や骨、肉を得る方法もあれば、道具を駆使して鉱石や木材などを得る方法もある。

前者の場合はモンスターを倒すための十分な装備品を、後者の場合は壊れた時のための予備まで含めた道具類を、かばんに入れておく。

また、かばんのスペースをできるだけ確保する目的で、手に入れた素材をその場で合成することもあるという。それゆえに、職人冒険者たちは合成用のクリスタルもいくつか持ち歩いているようだ。

しかし、油断は禁物である。いくらかばんの中身が万全であっても、一歩間違えば、狩るつもりだったモンスターに自分が倒されてしまったり、つるはしを振りかざした瞬間、モンスターたちに襲われたりすることになる。素材集めの現場では、命がけの場面もめずらしくはないのだ。

これらの、ともすると危険が伴う素材集めの中に、ただ1つその安全性において注目されている方法がある。俗にいう“チョコボ掘り”だ。

チョコボに乗ったまま素材を掘り出すこの方法なら、モンスターに襲われる心配もないため、誰でも安心して素材集めができる。多忙な冒険者には、わずかな時間でも楽しめるという手軽さでも人気のようだ。

さらに最近では、属性宝珠の原石が掘り出されたとの噂が流れたことがきっかけで、一攫千金を狙う“にわか掘り師”も急増しているらしい。

そこで気になるのが、チョコボ掘り師と呼ばれる人々のかばんだ。彼らは、どのようにかばんを使っているのだろうか? 今回は、各地の掘り師を対象にインタビュー調査を行った。

まず、彼らが必ずかばんに入れていたものについて。それは、チョコボの好物として知られる「ギサールの野菜」だった。この野菜を与えない限り、チョコボはいっさい穴掘りをしようとしないのだから、まさに掘り師必携のアイテムといえる。

インタビューに応じてくれた掘り師たちは、平均10ダース、つまり120回分の野菜をかばんに用意していた。それだけでもかばんはパンパンのはずだが、補充が困難な地域に出向く際は、さらに倍の20ダース以上を持参するという回答もあった。

余談ではあるが、ある掘り師は「ギサールの野菜」にまつわるジンクスについて教えてくれた。なんでも、チョコボに乗る前に自らもそれを食すと、チョコボと心が通い合い、より多くの素材が見つかるとか。このジンクスを信じる掘り師たちのかばんには、少しだけ多めに野菜が詰め込まれているに違いない。

一方、かばんの中のスペースについてはどうだろうか。インタビューの結果、掘り師たちのかばんには、平均して10種類の素材が収まる程度のスペースが確保されていることがわかった。

しかし、その程度では、かばんはすぐにいっぱいになってしまう。そのため彼らは事前に各種素材の価格を調べておき、店で安く買いたたかれる物については、その場で処分して、かばんを整理しているという。反対に、高値のつく素材については、自分の合成に必要なくても、残らず持ち帰るわけである。

もっとも、掘り師たちのすべてが合成素材や資金のために、日夜あくなき挑戦を続けているというわけではない。

ある人は、チョコボ掘りをする理由について、こう語っていた。

「普段仲間とともに行動することが多いと、1人に戻ったときに孤独を感じ、何をしていいかわからなくなることがあるんです。そんなときはチョコボと出掛けるんですよ」

チョコボと一緒に野山を歩きながらのんびり土を掘ったりしていると、不思議と気持ちが安らぐのだそうだ。

この冒険者のように、ゆっくりと散策の時を過ごすのも案外楽しいかもしれない。そんなことを考えながら、今回の取材を終えた。

これまでの、全3回にわたるかばん取材を通して、いろいろな角度から冒険者たちの素顔を垣間見ることができた。

普段はモンスターを相手に命がけで戦う屈強な冒険者でも、そのかばんには親友や恋人の想いが詰まった品や、願をかけたラッキーアイテムをしのばせていた。

ひとたび戦場から離れると、彼らは戦利品をかばんに詰めて商売に出掛け、釣りや素材集めにいそしみ、時には癒しを求めてチョコボと野山を歩いていた。

どんな時でも冒険者のそばには、使い慣れた道具や大切な戦利品、そして様々な想いと夢がいっぱい詰まったかばんがあった。

いくつもの喜びや悲しみ、別れや出会いを見守ってきたかばんに、もしも心があったなら、何を思い、何を語るのか。

あれこれと思いをめぐらせるうち、これまでかばんと共に歩んできた自らの冒険者人生を、ふと振り返る、そんな取材だった。

特派員 : Palulu / Siren

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