最近、ギルドに所属する職人達の動きが慌ただしい。

修行でもないのに同じ品を延々と合成し続ける者や、ギルドに駆け込んでは再び走り去っていく者。または、真夜中のギルドに集まる大勢の者たち。

彼らのそんな姿は、今やどのギルドでも見られるようになった。

ギルドに所属していない者の目には、奇怪にも映る彼らの行動。私もはじめは何事かと首を傾げた1人だが、その理由をある職人から聞いて納得した。

特定の職人ギルドと契約した彼らは、ギルドに指定された合成品や釣ってきた魚などを納めていたのである。なんでも、そうすることでギルドポイントと呼ばれる得点が付与されるのだそうだ。

もちろん、彼らの目的はこのギルドポイントそのものではない。ポイント交換で得られる報奨品の数々なのだ。

ギルドごとに用意されたそれらは、合成品に銘を刻むことを可能にする特殊クリスタルにはじまり、眼鏡や帽子、エプロンなどの装備品、果ては優れた調度品まで。どれを取っても職人垂涎の品ばかりなのだという。

中でもエプロンや調度品を入手するためには、確かな技術と並々ならぬ労力を必要とする。そのため報奨品を揃えることが、名実共に一流職人であることの証となるのだ。

それゆえに彼らは、日夜、合成や釣りに精を出しては、指定された品を契約先に納めていたわけである。

サンドリアの革工ギルドと契約したSegakobzさんも、そんな職人の1人。すでに師範の称号を持つ彼でも、報奨品の最高峰「黄金の羊の毛皮」には、まだまだ手が届かないという。

「欲しいものは“革”と大きく書いてあるような装備品! それと、交換できる装備品の種類を増やしてくれると嬉しいのですが……」

革工ギルドに対する要望も語ってくれた彼は、取材の後「今日の納入に間に合わなくなる〜!」と、大慌てで去っていった。

ウィンダスの調理ギルドを訪ねると、ギルドの前は合成に励む職人で溢れていた。その中の1人、Kikyiさんに取材した。

「調度品の包丁も欲しいけど、まずはエプロン」

にこやかな顔でそう言った彼女は、調理師エプロンを着た自分の姿を一刻も早く鏡に映してみたいのだそうだ。

そして、モグハウスに設置できる調理台などが欲しいと、彼女もまた、職人としての夢を語っていた。

ところ変わってバストゥークの鍛治ギルドでは、早くも貯めたギルドポイントで鍛治師エプロンを交換した職人、Yonecchiさんに話を聞くことができた。

「毎日貢いで、やっと入手しました」

嬉しそうにエプロン姿でポーズを決めた彼は、これまでの苦労話を聞かせてくれるのかと思いきや、他国の職人と同様に鍛治ギルドに対する要望を熱く語りだした。

「両目を守る為のゴーグルが欲しいですね! 鍛治職人は目が命なので!」

さらに、遠くを見つめたかと思うと「ギルドポイントを貯めるのに何年もかかるような報奨品もいいですね」とつぶやき、果てしなく長い道程を歩んできた者らしいストイックな一面も見せてくれた。

3国の職人達を訪ね終えて気づいたのは、彼らが皆、単に一流職人の証欲しさに汗を流しているのではなく、ギルドへの納入そのものにも情熱を傾けているということだった。

だからこそ、彼らは装備や調度品を一式揃えた後も、この仕事をずっと続けたいと考え、まだ見ぬ報奨品を想い描いているのだろう。

余談だが、慌ただしくなった彼ら職人達の活動は、他の生産者にも影響を及ぼしているようだ。

各ギルドが職人達と契約を開始したのと時を同じくして、競売所での素材取引が、にわかに活発になっているのだ。

栽培やチョコボ掘り、伐採、収穫、採掘に励む生産者も、素材に対する需要が高まっていることを知り、奮いだしたということだろう。

かくいう私も、どうやら職人達の情熱に触発されたらしい。この仕事を終えたら、まさかりを手にゲルスバへ向かおうと思う。

特派員 : Mizakura / Quetzalcoatl

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