皆さん、ごきげんよう。“動物のお姉さん”アテルーネの再登場よ。

さて、今回はたくさんお便りが届いているようだけど、そうね、このタルタルの坊やの質問にしようかしら。

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どうぶつのおねえさん、はじめまして!
ぼくは、トカゲさんがだいすきな獣使いです。でも、トカゲさんを呼ぶときにつかう「腐肉汁」だけは、きらいです。どうしてトカゲさんは、あんなデロデロにくさったごはんがすきなんですか?
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早速ですが、坊やのリクエストに応えて“トカゲ族”の話をはじめます。

トカゲちゃんは、いわゆる“肉食リザード類”を代表する生き物ね。ラプトル族やエフト族なども同じリザード類の仲間で、うちのセンセが言うには、さらに、あのグゥー……。これについては、また別の機会に話すわ。

まずは、トカゲちゃんの代表種を挙げましょう。

よく見かけるのは、やはりヒルリザード(Hill Lizard)ね。クォン大陸のグスタベルグ、ザルクヘイム南部、ヴォルボー、さらにミンダルシア大陸のアラゴーニュと、かなり広範囲に分布していて、オークに飼われているもの以外は、だいたい乾燥した土地に棲息しているの。……あら、オークの話を知らなかった? ヒルリザードが彼らの家畜にされているのは有名よ。うちのセンセこと生物学者クラボエール男爵も、著書にこう記しているわ。

『獣人のオークは、ヒルリザードを飼育して食糧にしているんだ。他にも、番犬代わりの“番トカゲ”、チョコボ代わりの“乗トカゲ”、兵士代わりの“戦トカゲ”などとして役立てているんだよ!』

……言い忘れていたけど、出典は、お子様向けの『なぜなにこども動物学』よ。

さあ、童心に帰ったところで、右の挿絵を見なさい。ここに描かれているのが、うちのセンセが3年前にゲルスバで目撃したという、オークの騎士と乗トカゲちゃんよ。あら? どちらも、お利口さんに見えないのは気のせいかしら? ということで、次。

ヒルリザードに次いで数が多いトカゲちゃん、それはエルシモ島だけに棲息しているアッシュリザード(Ash Lizard)です。

『アッシュリザードは、少しくらい有毒なガスを吸っても平気だから、火山地帯に棲んでいるんだ。すごいね!』

すごぉいアッシュリザードについて、ここで問題。餌となる生物も少ないのに、こんな過酷な環境に棲んでいるのはどうして?

正解は「そこに棲むしかなかったから」。アッシュリザードに限らず、現存するトカゲ族は、かつて大陸にある餌の豊富な土地から追い出された可哀想な子たちなの。これについては、うちのセンセの論文に記述されているわ。今度のは大人向けよ。ふふ……。

『ほとんどの肉食動物は、獲物を狩る“プレデター(捕食動物)”と屍肉を漁る“スカベンジャー(清掃動物)”とに分類される。もちろん肉食リザード類も例外ではなく、生態系におけるポジションや役割を同類の中で二分するようになった。プレデターとなった者たちは、群れをなして狩りをするために脚力を発達させた。スカベンジャーとなった者たちは、獲物の鳴き声や屍肉の臭いを追うために聴覚や嗅覚を発達させ、さらにその多くがプレデターから獲物を奪うために、身体を大型化させた』

はい、注目。現在のリザード類でいうと、プレデターの代表選手としてはラプトル族が挙げられるわ。
では、スカベンジャーの代表選手は? そうよ。何を隠そう、あのトカゲ族なの。

『プレデターとスカベンジャーとに分化することで、食糧を効率よく分かち合い、繁栄を謳歌していた肉食リザード類にも、やがて脅威が出現した。いずこからか進出してきたビースト類のプレデターだ。やがて、リザード類のプレデターは、機知に富んだ彼らにプレデターの座を奪われてしまったのである』

さあ、目を閉じて思い出すのよ。あなたたちがラプトルちゃんを見かけるのは、どんな場所? そう、たいていは荒れ地よね。うちのセンセによると、そういう土地では、あの子たちが本来のすばしっこさを発揮できるから、プレデターの座を守れているのだそうよ。

ところで、スカベンジャーの方はどうなったと思う?

『同じリザード類でも、さらに大きな打撃を受けたのが、スカベンジャーであった。彼らは巨体ゆえの鈍重な動きが仇となり、俊敏なビースト類の格好の餌食となってしまったのだ』

肉食動物なのに、自らが食べられてしまうなんて皮肉よね。結局、スカベンジャーとして生きていたリザード類の多くは、絶滅してしまったそうよ。けれど、比較的小型だった種族だけは、難を逃れて荒れ地に落ち延び、絶滅を免れたらしいわ。もうわかったわよね? それが今のトカゲ族なのよ。

……そうね。ここまでおとなしく聞いてくれたからご褒美タイムよ。特別に『新旧交代の図』を初公開してあげる。ほぉら、すごくいいでしょう? 隅々まで堪能しなさい。

それでは最後に、ブガードちゃんのくだりを紹介して、今回の話を締めくくります。

『独自の生態系で知られていたタブナジアには、“ブガード”という大型のリザード類が棲息していた。彼らはトカゲ族と非常によく似た骨格をもつため、大型スカベンジャーの遺存種と解釈することも可能ではないだろうか』

タブナジアは、大昔から山岳や海で隔絶された場所だったらしいの。だから、大型スカベンジャーがビースト類に発見されることなく今も生き延びていても、不思議はないわよね。あなたたちは、どう思う? 各自、想像の世界で楽しんできなさい。それが宿題。

……というわけで、今回の答えは、これよ!
====================================================================== トカゲ族は、動物の屍肉を主食とする“スカベンジャー”に属するため、獣使いたちが用いる「腐肉汁」にも、つい飛びついてしまう。 ======================================================================
どう? 満足したかしら?

Illustration by Mitsuhiro Arita