バストゥーク共和国軍ミスリル銃士隊――。フォルカー隊長を筆頭に、暗黒騎士ザイド氏(現在は行方不明)、豪腕の戦士アイアンイーター氏、そして弱冠20歳で入隊を果たしたアヤメ氏とナジ氏の5銃士で構成された大統領直轄の先鋭部隊だ。
大統領府の警護はもちろんのこと、周辺の獣人討伐から冒険者との共同作戦まで、あらゆる任務を完璧にこなす史上最強の“何でも屋”、もとい特務部隊として名を馳せている彼らであるが、他国の国民や冒険者にとっては、まだまだ馴染みの薄い存在だろう。 しかし、喜んでほしい。彼らに関心を寄せる読者諸氏のために、いわゆる裏ルートで交渉した結果、遂に編集部は各隊員への個別インタビューに成功したのである……! それではここに、興味深いインタビュー結果を公開しよう。 ――ミスリル銃士隊に入隊した理由・経緯は? フォルカー隊長: 先々代のミスリル銃士隊隊長であった叔父をはじめ、銃士隊で要職を務めた者がまわりに多かったのでな。それを目指すのが当然と思っていた。 ザイド氏: なぜだろうな? 私と同期入隊ではあったが、奴の考えはわからん。ただ、銃士経験もない者が抜擢されたのは、ミスリル銃士隊設立以来、奴が初めてだった。(フォルカー隊長談) アイアンイーター氏: 鋼鉄銃士隊にいた頃の「パルブロの復讐」がきっかけだ。仲間を失うという苦い経験をして以降、上を目指し、無謀にもミスリル銃士隊に自らを売り込みに行った。その時の相手が、フォルカー隊長だったのだ。 アヤメ氏: ノーグでの修行を終えた18歳のある日、さるお方の紹介で、シド工房長と会う機会を得ました。私は工房長の信念に共感し、この国のために己の刀を活かす道を探しました。そして見つけたのが、今の道です。 ナジ氏: 冒険者の親父より、もうちょっと目立ちたいなあ……と思って、鋼鉄銃士隊に入ったんだ。で、ある日、視察にきていたアイアンイーター先輩に手合わせを申し込んだんだけど、それがもう、ボッコボコにされて……完敗。だけど、なぜかその後、ミスリル銃士隊の面接に来い、って隊長に呼び出されたんだよなあ……。 ![]() ――銃士隊でのあなたの位置づけ・役割は? フォルカー隊長: ……隊長、ということになっている。隊長に就任したのは、20年前の大戦で闇の王を封印した後、「パルブロの復讐」をきっかけに先代隊長が辞任したためだ。忘れもしない、870年のことだった。 ザイド氏: 行方不明……。(フォルカー隊長談) アイアンイーター氏: 雑用から特命まで、なんでもやる仕事だからな……。まあ、実際は主に大統領府の警護、ツェールン鉱山方面の監視だ。 アヤメ氏: いろいろありますが、諸外国の調査、または交渉が最も多い仕事でしょうか。 ナジ氏: 斬り込み隊長! いや、斬り込む機会なんかめったにないし、自分で言ってるだけなんだけど……。実際は、大統領府の警護……かな? ――お気に入りの武器や防具は? フォルカー隊長: 非常事態に対応するのが仕事なものでな、手にした物が武器で、身に着けたものが防具だ。それ以上はない。また、隊の方針として、武器や防具は見た目ではわからないようにしている。 ザイド氏: まあ奴は特殊だからな……。それでも、武器防具の特性を読まれないようにはしていたはずだ。(フォルカー隊長談) アイアンイーター氏: 特にこだわりはないんだが……。この大斧か? ああ、これは派手なだけの代物だ。あまり実戦向きじゃない。まあ、大統領府の警護を司る者として、それなりの格好をしておかないとな。 アヤメ氏: 今使っている刀はノーグの修行時代からの付き合いですので、お気に入りとかそういう感情以上のものがあります。ただ、できるだけ国内では帯刀しないようにしています。これは入隊時に私が提案しました。 ナジ氏: 実はいろいろ持ってるんだけどね。アヤメが普段持つ必要ないなんて提案するからイマイチ格好がつかないよなあ……。 ――好きな食べ物は? フォルカー隊長: 職人食堂の飯は意外とうまいんだが、私が顔を出すと皆食べにくそうにしているのでな。時々、特別に出前してもらっている。 ザイド氏: 生肉をよく食べていたようだが……。(フォルカー隊長談) アイアンイーター氏: ガルカンソーセージは最高だな。若い頃は私も山に登ったものだ。 アヤメ氏: ひんがしの国の食べ物はやはり口にあうようです。スシとかおにぎりとか……。 ナジ氏: 好き嫌いはあまりないけど……、ばあちゃんの作ってくれるアイアンパンかな? ――好きな異性のタイプは? フォルカー隊長、アイアンイーター氏:ともにノーコメント アヤメ氏: あまり考えたことはありませんが……、軽薄な男性とはあまり関わりたくないものです。 ナジ氏: おしとやかな女がいいね。絶対、刀なんて握らなそうな……。 ――正直、銃士隊の中でいちばん強いのは誰だと思う? フォルカー隊長: ……ザイドだろうな。 ザイド氏: おそらく奴は誰かと比べられるために剣を握っているわけではなかろう。(フォルカー隊長談) アイアンイーター氏: 若い頃に見たザイドの太刀筋は、それは恐ろしいものだった……。あれは常人の技ではない。 アヤメ氏: 興味がありません。 ナジ氏: アイアンイーター先輩じゃないかな? 生まれて初めて負けた相手なんだよ。隊長もそろそろ年だろうしね……。 ![]() こうして各人の回答を並べてみると、エリート中のエリートというわりには、実に親しみやすい一面を持った人々だということがわかる。彼らは、地元バストゥークの子どもたちに根強い人気を誇っているらしいが、それも頷けることではないだろうか。 それでは最後に、ミスリル銃士隊を目指す子どもたちに向けた彼らのアドバイスを紹介しよう。 フォルカー隊長: バストゥークの未来を決めるのは君達だ。武術も勉強も、努力を忘れないでほしい。 アイアンイーター氏: 世の中には様々な人間がいる。いい人も嫌な人も……。でもどんな出会いも、きっと自分を成長させるはずだ。 アヤメ氏: 家族を大切にしてください。あなたたちが信じる道を行く上で、必ずや支えになってくれることでしょう。 ナジ氏: エー、オホン。良い子のみんな、好き嫌いなくなんでも食べてれば、君もミスリル銃士だ! 多くの子どもたちの笑顔を守り、夢を与え続けること――。 それこそが、彼らミスリル銃士隊にしか遂行できない、最重要任務なのかもしれない。 Illustration by Mitsuhiro Arita
|