Marelinne R d'Oraguille(557 - 588)
第10代サンドリア王。 在位568 - 588年。戦王アシュファーグの従妹。乳児の時に戦王の粛清によって皇太子夫妻であった両親を失い、屋敷の調理人に密かに引き取られ、その娘として育てられた。10歳の時、戦王が夭折したため、その後継者を巡って諸侯が対立。あわや内戦勃発という時、直系である彼女の身分が明かされて即位の運びとなり、事なきを得た。

しかし、しばらくすると、今度は後見人の地位を巡って貴族の対立が表面化。嫌気が差した彼女は、17歳にして辺境視察という名目で王都を出立。以後、一度も王都には戻らず、国内各地を巡行して防備を整えつつ、旅先から集めた情報を元に王令を発して政務をも担った。

580年、タブナジアを訪れた際、侯子フィレディナンと電撃的に結婚して耳目を驚かせたが、その後も巡行は止めず、その8年後にアシャク山脈で遭難して不帰の人となった。
当時、即位後の数年しか玉座を暖めなかった王女の評判は、決して芳しくはなかった。しかし、後に龍王ランペールが辺境を視察した時、彼女の縄張による防壁を目の当たりにし「旅王がおらねば、我が国は百年前とうに滅んでいたろう」と詠嘆したことを契機に、その功績が史家によって再評価された。
Illustration by Mitsuhiro Arita