釣りの技術に大きな改新が訪れた。

以前の釣り技術では、何かが竿にかかったとき、釣り上げられるかどうかは運任せの面が大きかったが、このたび公開された新しい釣り技術では、釣り人の腕前によっては獲物を釣り上げやすくなったという。
そのうえ、魚の食いつきも、以前と比べるととても良くなっているというのだ。

さっそく、ウィンダス漁師ギルドで新しい釣り技術を教えてくれているラッフィングリザード(Laughing Lizard)さんを訪ねてみた。

「なんじゃワレは? 新しい釣り技術を教えてほしいじゃと?
まずは竿を握って自分で覚えんかいコラァ!!」

いきなり怒られてしまったが、もっともな意見なので、とりあえず竿と餌を用意して挑戦することにした。
竿を構え水面に餌を投げると、すぐに何かがかかったので釣り上げたが……むむむ、獲物に逃げられてしまったようだ。

「コラァ! ちゃんと竿捌きして獲物の体力を奪わんから、逃げられるんじゃぁぁ!!
竿が右に引っ張られたら左に、左に引っ張られたら右に、カラダを動かして獲物を弱らせるんじゃ!
この格闘をしっかりせんと、釣れるものも釣れないんじゃい!」

今度はあせって釣り上げずに、慎重に獲物と格闘を開始。
なるほど、確かに竿と反対の向きにカラダを動かすと獲物の体力が弱っていくのを実感できる。

「時間がかかりすぎると、獲物に逃げられるぞ。
体力が減りきったら釣り上げるんじゃ!」

ラッフィングリザードさんのアドバイスのおかげで、なんとか釣り上げることができるようになってきた。
スキルもぐんぐん上がっているようだ。
でも、小魚ばかりでなかなか大物が来ないのだが……。

「釣りたい魚に合った餌を用意するんじゃぁ!!
その魚がいる場所じゃないと、もちろん意味ないがな。
あと、木製の竿はしなりがよくて竿捌きのときに体力を奪いやすいぞ。
合成素材製は獲物をキープする時間が長くなるんじゃ!
あとは練習あるのみじゃぁぁ!!」

大物を釣り上げられるようになるまでの道はなかなか厳しそうだが、テンポよく魚が釣れるので、楽しく練習できそうだ。

だが、しばらくの間、釣りを続けていると、何もかからなくなってきた。
どうやら、疲れてしまったらしい。
疲れがたまると、場所を移動したり、戦闘などをして気分転換しないと、釣果が悪くなってしまうようだ。

気分転換に付近の釣り人たちに、最近の釣り事情についてインタビューをさせてもらうことにした。

「近くの人の釣ったものがわかるようになったのがいいね。
最近は友達とよく釣り勝負をして楽しんでるよ。
船釣りとか、まわりで大物をいっぱい釣ってる人がいると、ちょっと悔しいけどね」

「前はリンクシェル仲間とおしゃべりしながら、のんびりと釣りしてたんだけど、釣りしながらおしゃべりするのが難しくなったなぁ。
竿をたらす合間にしゃべればいいんだけど、
リキャストも短くなったから、ついつい無口になっちゃう。
それだけ、釣りに夢中になってるってこと(笑)」

「魚との格闘がおもしろい。
悪い予感がしても、釣り上げてやるぜ!って逆に燃えるね。
でもそれで竿がポキッといっちゃうことが多いかな(笑)
前は疑似餌ばかり使っていたんだけど、糸切れしちゃうことが多いから、
最近はなくなっても痛くない生餌をメインで使ってます」

「お店で買い取ってくれる値段が下がったのは残念だけど、
競売所やバザーでほかの冒険者との取り引きは前より活発になったと思うよ。漁師としては、釣った魚を食べてもらえたほうがうれしいしね」

「格闘のときはFishって出てるのに、釣り上げてサブリガだったりすると“うそつき”って思います……」

「自分は調理人なんですが、釣りの腕はまだ未熟で、なかなか目当ての魚が釣れないんです。
でも最近は、まわりの人が釣った魚がわかるようになったから、
自分の欲しい魚を釣ってる人を見かけたら、その場で買い付け交渉させてもらっちゃったり。
最近はスシがよく売れるので、魚の需要も高いんですよ」

「この前、初めて伝説の魚を釣り上げました!
激しい格闘の末、自分の手で釣り上げるのは感動モノです」

「えーと……あっ! かかった……」

中には落ち着いて話を聞かせてもらえないほど、真剣に竿と格闘している人も……。
釣り人たちの腕前はそれぞれだが、みな、新しくなった釣りを楽しんでいるようだ。

次々に魚を釣り上げる様子を見ていると、こちらも早く釣りをしたくてうずうずしてきた。伝説の魚の目撃情報も続々と寄せられているし、ますます腕が鳴るというものだ。さっそく新しい竿を買って帰ることにしよう。

text by Takashi and Asami Watanabe 
Illustration by Mitsuhiro Arita