私の名はエグゾロッシュ(Exoroche)。王立騎士団に所属する騎士である。
騎士である私がそうであるように、冒険者諸氏にとっても武器や防具は自らの命を預ける戦場の友であることだろう。私の小話で、用法だけでなく構造や由来についても学び、より友情を深めていただければ幸いである。

では、今宵はブリガンダインについて御話しよう。

ブリガンダインは、身体に密着するように様々な形に細かく裁断された黒鉄の板を、黒虎のなめし革で繋ぎ合わせ、さらに表面を豪奢なビロードで鋲止めして覆った大変美しい胴鎧だ。(下図 [Plates] はブリガンダインの内側に並ぶ黒鉄板の様子)
無論、ブリガンダインはただ美しいだけではない。各板が身体の動きを阻害しないように巧みに配置されているため、重厚な鎧を着慣れた戦士や騎士だけでなく、多くの職能の者が着用できる汎用性の高い鎧でもあるのだ。その着心地の良さたるや、私なぞは寝衣としているほどだ。

もっとも、どんな防具にも欠点はある。ブリガンダインの場合、それはコストだろう。製作に非常に手間がかかる上、皮革・鍛冶・裁縫すべてにおいて精通した職人にしか作りえないのだ。

だが、かつては富裕な騎士しか身に着けられなかったブリガンダインも、優秀な職人が増えた昨今では手頃な価格に落ち着きつつある。これを機会に冒険者諸氏も一領購入してみてはいかがだろうか? かくいう私も息子の騎士叙任式に新品をプレゼントしようと少しずつ貯金している。まぁ、当分先の話となるだろうだが……。

※戦場においては、上腕甲 [rerebrace] と肘甲 [couter] を取り付け、ビロード地を保護する亜麻布の外衣 [surcoat] を羽織り、鉄鎖の頭巾 [coif] を被って、腰にベルト [belt] を締めて着用されることが多い。そのため、通例これらがセットでブリガンダインとして扱われている。

Illustration by Mitsuhiro Arita