自然の力を使って、素材を加工するクリスタル合成。合成は趣味程度に始めることは簡単だが、その道を究めることはとても困難だ。自分の腕前を磨き、ギルドに提示される課題を何度もクリアしていかねばならない。

印可以上の階級に進むためには、どれかひとつの道に専念する必要もある。その道を極めた師範の位を持つものは、数えるほどしかいないという。はたして、職人師範とはいったいどんな生活をしているのだろうか?

今回は、木工職人のTさんにお話をうかがった。

――こんにちは、今日はよろしくお願いします。
  Tさんは木工職人だそうですが、現在のスキルはどのぐらいですか?


「96です。早く100にしたいんですが、なかなか素材の調達が難しくて。師範の位をいただくまでは、がむしゃらに修行していたんですが、昇級試験に合格してからは、修行のペースが落ちているかもしれません(笑)」

――なるほど。そもそもなぜ木工の道を選ばれたのですか?

「狩人をやりたかったんです。矢弾を作れるので、お金の節約になればいいなと思って始めました」

――冒険者としての腕前はどのぐらいでしょうか?

「狩人がレベル72です。こちらもまだ頑張らないと(笑)」

――冒険者としてのレベルが高くないと木工の道を歩むのは大変だと思いますか?

「うーん、自分でいろんな場所に行って伐採するとなると大変かもですね。でも、サンドリアが拠点なら、レベルが高くなくてもゲルスバで伐採できるし、ギルドで原木を購入できるので大丈夫だと思いますよ」

――ほかの合成もやっているんですか?

「錬金術と骨細工と裁縫を目録の位までやりました。錬金術は炎の矢尻などの、特殊な矢弾のパーツを作るときに役立つんです。骨細工は骨系の矢尻を作るために。裁縫もこれまた矢のパーツの矢羽根を作るのに役立ちます。あと、ベッドとか布素材を使った調度品を作るときにも必要になるんです。鍛冶や彫金はあまりやってないのですが、もっと頑張らなければって思いますね。調度品や弓を作るとき、必要になることがあるので……」

――普段はどんな生活をしているんですか?

「木を伐って材木に加工してストックし、矢弾の材料が溜まってきたら狩人の修行にいく感じ。 気分次第でいろいろ遊んだり作ったりしますけど、師範だからってそんなに特別なことはしてないですよ(笑)」

――木工の苦労するところはどんなところですか?

「風のクリスタルを大量に使うところ。原木を削って材木にするんですが、クリスタルの消費量が半端じゃないです。 そうそう、少し前にギルドに指定生産品を納めたおかげで、ランバージャックという技術を伝授していただいたんです。原木をロープで束ねて一気に削る技術なんですが、今までより少ないクリスタルで原木削りができるようになったので、スピードアップと同時にコスト削減にもなっています。これは便利ですよ〜」


――今まで修行に使ったお金と儲けたお金はどちらが多いですか?

「途中までは修行にかかる費用のほうが高かったんですけど、全体で計算すればかなりの黒字ですよ。今は需要の高い製品が多くて、お金稼ぎをするのもラクですね」

――何を売って稼いでいるんですか?

「常に需要があるのは忍具の紙兵ですね。空蝉の術で使うので、忍者さんには必需品です。素材となるエルム原木は高いですけど、木工スキルが高ければ一度でたくさんできあがることも多いので……。 あとは調度品。素材が高価な分、どうしても高くなっちゃうんで、バザーで販売したりサーチコメントでオーダーメイドを承ったり、あまり競売所を利用しないで販売するようにしています」

――材料調達はどうやってしているんですか?

「なるべく伐採で、足りない分はギルドや店で購入してます。伐採はゲルスバ野営陣が一番はかどるような気がします。ライバルは多いですけど、森林地帯が狭くて作業しやすいんですよ。最近はたまにタブナジア群島にも足を延ばしてるんですが、採れるものはとてもいいんだけど、なかなかポイントが見つからなくて。じっくり時間をかけて伐採するときには、景色も良くてお気に入りなんですけどね」

――こんなものを作りたい! ってアイテムはありますか?

「木彫りの人形とか……私の出身地が、熊が鮭を口にくわえている木彫りの置物で有名なので(笑)。モンスターをモチーフにした彫刻とか作れたら、おもしろいと思うんですよ!」

――今まで合成したもので一番思い出に残っているものを教えてください。

「この前、友人に頼まれてたまたまできた“テラスタッフ”です。アーススタッフのハイクオリティ品なんですけど、特殊なクリスタルを使って銘入りで作って、友人もとてもよろこんでくれました」

――では、最後にメッセージをお願いします。

「調度品は一度置いたら置きっぱなしではなく、たまに新しいものを買って部屋の模様変えをすると、気分転換にもなっていいですよ。 あと、木工ギルドはアローウッド材の入荷量を増やしてください!」

――ありがとうございました。

師範といっても、木工一直線ではなく、マイペースで合成や冒険を続けているTさん。 このぐらいの情熱が、長い修行の道のりを支える秘訣なのかもしれない。

text by Takashi and Asami Watanabe 
Illustration by Mitsuhiro Arita