Lungo-Nango(342 - 376)
魔法時代中期の連邦軍大魔元帥。魔法学校史上稀にみる落ちこぼれだったが、中退後に入った軍で頭角を現し、弱冠24歳にして戦闘魔道師団長に抜擢された。

やがて当時、政情不安定であったウィンダス領ガラダエルラダ(現ノルバレン)の属州長官に着任すると、早々に領内を荒らしていたエルヴァーンのガレヤン族とサンドリア族を討伐して、さらに武名を高めた。

369年、受勲のため赴いた元老院においてエルヴァーン諸族討伐の必要性を提言し、その場で許諾を得ると、タルタル兵と野獣で混成した奇妙な軍勢ルンゴナンゴ軍(征討軍)の編制に着手した。

翌年には、サンドリア族討伐を皮切りにクォン大陸を縦断する遠征を開始し、ファシュヴェル・ビュルトラン等の有力エルヴァーン諸族の軍勢を、ほとんど兵を失うことなく奇抜な戦術で次々と撃破。その功績多大であったため、異例なことに戦陣において大魔元帥に任命された。

その後、破竹の勢いで大陸南部に侵攻。現グスタベルグを拠点としていた山岳部族シャティフのゲリラ戦術にこそ手を焼いたものの373年にはエルヴァーン最後の砦モルトゥーグを陥落させ、ついにクォン大陸の制覇を成し遂げた。

しかし、元老院から召還され、各地で盛大な歓待を受けながら聖都に戻った彼を待っていたのは、栄光の凱旋式ではなく連日の査問委員会への出頭であった。

そこで作戦における独断専行を糾弾されて大魔元帥の任を解かれ、挙句に手塩にかけた旗下の軍まで解体させられた(一部の将兵が解散を拒み、ルンゴナンゴを救出する反乱を企てたものの彼が中止させたと云われる)ルンゴナンゴは、聖都追放刑が宣告されてマウラに移送されて間もなく、熱病におかされて失意の内に頓死した。

没後、罪人とされた(後に名誉回復はされたが)彼の遺品や記録が散逸してしまった上、幼少の頃よりクァールのメウルルを生涯の友とし、数多の狂暴な野獣を手懐けて軍勢に加えていた、という彼の伝説は余りにも荒唐無稽であったため、彼の実在自体が怪しまれていた時代もあった。しかし、大戦後の共同研究でエルヴァーン側の資料からもその信憑性が裏付けられたため、彼には獣使いの天賦の才があったのではないか、というのが最近の定説になりつつある。

Illustration by Mitsuhiro Arita