優勝目指して、大物を狙う釣り人たち。
見えない相手との格闘。にじむ汗。うなる糸。きしむ竿。あともう一歩、そのもう一歩に自慢の竿は耐えられるのか。こいつは伝説のヌシか、それともバケツかサブリガか! その対面は勝利の時。その爽快感がやめられず、ペンではなく釣竿を取る私のもとに、ある噂が聞こえてきました。

まだ釣りを楽しむ冒険者が少なかった頃から、釣りスポットや技法などを自分の足と竿で調べ上げ、広めてきた“あの人”。かつて本誌にも紹介され、冒険者の間で「知る人ぞ知る」存在となっているWangさんが、催しを開いているというのです。

その名も「第一回 チキチキオオナマズ釣り大会」

とにかくオオナマズを釣り上げて、そのサイズと重さで釣りの腕を競うというこの大会。腕自慢の釣り名人達から早くも応募が殺到しているようです。上位入賞者にはWangさんお手製の釣竿と、副賞の賞金をプレゼント。寄せられたオオナマズはお店に売り払い、ブービー賞の賞金に充てるという茶目っ気がたまりません。

「毎日10人以上の応募があります。長年釣りをやってきましたが、初めて見るような大物も届いています。初めからブービー賞狙いの方も意外と多くて笑っちゃいました」

狙えそうで狙えないのがブービー賞。その賞金額も未知数とあって好奇心をくすぐられます。メダカみたいなオオナマズが送られてくるのかしら?(笑)
「締め切り間際には駆け込みでの応募が殺到することも予想されますから、まだまだこれからですよ」
にやりと笑いながらWangさんは話していました……。

賞金総額はかなりの額になるのですが、ほとんどはWangさんが冒険者生活の中で苦労して貯めてきた大事なお金から出されるとのこと。ポケットマネーをはたいてまでこの大会を催されたのはどういった思いつきからだったのでしょう?
「釣りの伝導者として紹介されましたがそれっきり何もしてこなかったので、普段応援して頂いているみなさんに感謝する気持ちで始めました」
私もWangさんの築いた道をたどってきた釣り人の1人なので、普段から応援・感謝こそしていましたが、それに応えてくれるなんて、Wangさんの懐の広さに感服です。

今回の大会を陰で支えるスタッフはFishermanさん。毎日送られてくる巨大なナマズをランク付けし、お店に売りに行くのがその日課とのこと。100Pz以上の巨大魚なんて、売りに出すだけでも大変そう。

「Fishermanなんて名乗ってますが、漁師というよりほとんど魚屋ですねえ(笑)」

ところで“第一回”とのことなのですが……?
「今回の試みがうまくいったら定期的に開くのもいいかなぁと。それと、もしもこの大会が成功例を作ったことで、遠い場所の他の誰かが同じような大会を催してくれたらと思い、“第一回”としました」
きっとこのままいけば大成功間違いなしでしょう。他の誰かといわず、ぜひWangさん自身が二回三回と続けてほしいものです。

「さて、そろそろ賞品の竿を作らないと」
日焼けした笑顔を残して、伝説の釣り人は夕闇の中へ消えていきました。

次の日、ダンナのTathumaとさっそくエントリーするためにオオナマズ釣りに。
Tathuma「さぁて、ガシガシ釣るぞ」
Myhal「張り切ってるのね〜 賞金狙うの?」
Tathuma「エサが余ると俺の弁当になるからな!」

今夜はお魚料理にしようね……。