[白魔道士マイナ]
マイナでーっす。
ついにフェローとお友だちになりましたっ!
耳たぶにくっついてるのが、シグナルパール。
これをちょちょいと操作して……

「あ、ガワーダ? いまヒマ? 手が放せない?
 うん、あたしは平気だからすぐきてっ」

これだけで、あっとゆーまに来てくれる用心棒なんです。
あ、もう来ちゃった。

「……お…お待たせ…しました」

ちょっと、なんでそんなにボロボロなの?
もしかして、なにかに絡まれたとか?

「…………スミマセン」

えっ?
って、こっちに向かってくるクゥダフの群れはいったい。
キャァーーーーっ!?




[2人の関係]
ガワウダです。
マイナはガワーダと呼びますが、それは間違い。

「ガルーダみたいでカッコいいのにっ」

俺は召喚獣ではありません。

「それにガワウダだと、セリフの最後に“〜ウダ!”ってつけてほしくなるし〜」

意味わかりませんから。

「オッケー。明日くらいからちゃんと“ガワウダ”って呼ぶね」

今からじゃないんですか!?

「それじゃぁ、ガワーダ。あたしのことはマイナさんって呼んでね」

……。
遊ばれている! ぜったいに遊ばれている!!



[異郷の冒険者]
あたしたちの冒険の舞台は、だいたいクォン大陸かミンダルシア大陸。
でも、ヴァナ・ディールはもっと広いんだって。

たとえば、あたしの盾として戦ってるガワーダは、南にあったガルカの都で育った本場モノ。

「俺は、バストゥークで育ちました!
 いて、いててっ」

普通のガルカに見えるけど、その正体はガルカの都からやってきたガルカのプリンスなのだ。

「誰の話をしてるんですか!!」

……だったらいいのにな〜。

「そんなことはいいから、はやくケアルを……。ぐはぁ!」



[ひんがし]
皆さんご存じですか?
東方から伝来した独自の文化が、我々の間でも広まっていることを。

「侍と忍者は、海を越えて伝わってきたジョブですね」
「ブシドーとかシノビとか、しぶいよね! マイナもそういう系の彼氏が欲し〜い」

「マイナさん、ジョブのほかにはなにかご存じですか?」
「えっと、お祭りだとヒナマツリとかレンブサイでしょ?」
「おお、よく勉強されていますね」
「あったりまえだよ! 食べ物だって知ってるもん。
おにぎりとスシ! どっちもライスと具を一緒に食べられるところが、マイナのお気に入り」

「今ではすっかりおなじみになりましたね」

「あとねぇ、これ知ってる?
“ひんがし”っていうのはチョンマゲのことで〜」

「え!?」

「そこに住んでる人たちは全員チョンマゲだから、冒険者の間では
“ひんがしの国”って呼ばれてるんだよ。あ、こんなの常識かな」

……やっぱり、俺は遊ばれているんでしょうか。



[東西南北]
地図に載っていない国は、ほかにもあるってホントかなぁ?

「たとえば南には、ミスラの国」
「カザムならマイナも行ったことあるよ」
「カザムのことではありません。
ずっと南に、カザムも属する大きな国があるんです」
「へぇー、へぇー、へぇー」

「じゃぁ、北は?」
「オークの帝国とかギガースの住む島々とか……」
「オークもギガースも、なにも考えてなさそうだね」

「ほかにも、ミンダルシア大陸の東に広がるググリュー洋の向こうには、近東と呼ばれる地域もあるらしいですよ。ちなみに俺の持っている鏡も近東製で……」

「マイナ、わかっちゃった!!!」
「どうしたんです?」
「“ひんがしの国”は、西にあるんでしょ!!」

(つづく)



Illustration by Mitsuhiro Arita