冒険者というと重厚な鎧を想像しがちだが、実際にはヴァナ・ディールで活躍する冒険者の半分以上は、鎧を装備していない。
魔道士や、東方系武術を身につけた武人や、身軽さを追求してあえて軽装備で行動する者など、布製の防具を愛用する人は多いのだ。
また、戦場では鎧をまとって馳駆していても、街中ではおしゃれ着として布製の服に着替える者も多いという。
需要の高い布製品を作り出す裁縫だが、師範階級の職人はいったいどんな日常を過ごしているのだろうか?

今回は、裁縫職人のUさんにお話をうかがった。

――こんにちは、今日はよろしくお願いします。
Uさんは裁縫職人だそうですが、現在のスキルはどのぐらいですか?


「94です。裁縫師範の後半は、入手しにくい素材が多いのでスキル100が遠いですね。
ほかの合成スキルは全部目録クラスで、55〜60です。
裁縫はサブスキルが必要なレシピは少ないんですが、なんとなく全部上げてしまいました」

――なぜ、裁縫の道を選ばれたのですか?

「最初、メインジョブがモンクだったんで、自分の服を作れたらいいなと思って。
あと、土のクリスタルで合成するものが多そうだったから、クリスタルの入手がラクそうだなって狙いもありました。
実際始めたら風とか雷とかもよく使うんですが、裁縫は比較的入手が簡単なクリスタルを使うレシピが多いと思います」

――冒険者としての腕前はどのぐらいでしょうか?

「忍者75です。モンクをLv60までやったあと、『ジラートの幻影』で忍者のジョブが追加されて始めたらおもしろくって、メイン忍者になったんです。あとは、吟遊詩人が72で白魔道士が70。
防具はほとんど自分で作ってます(笑)」

――いろいろなジョブをやってるんですね。冒険者としてのレベルが高くないと、裁縫の道を進むのは大変だと思いますか?

「うーん、僕がスキル上げをしていたときは、ギルドも競売も、素材の値段が今ほど高くなかったんですよ。最近は、素材が高くなってるから、自分である程度モンスターを狩ったりできたほうがいいと思いますね。
ギデアスで敵に襲われないぐらいのレベルがあれば、収穫をするって手もあります」

――収穫ではどんなものが採れるんですか?

「モコ草、亜麻、サルタ綿花、赤モコ草とか……裁縫で必要ないマージョラムとかマグワートも取れますが。
自分がいらないものは競売で売れば、資金稼ぎにもなります。
草刈鎌が壊れにくいのがいいですね」

――収穫で採れない素材はどうやって入手してますか?

「自分でモンスターを倒して集めることが多いです。
絹糸はいくらでも使うんで、クロウラーは見つけたら放っておけないですね(笑)。
あとは、リンクシェルの友人に、拾ったら安く譲ってもらえるように頼んでたりします。
以前しばらくのあいだ、大鳥の尾羽根を使って作る矢羽根でスキル上げしてたんですが、この尾羽根がなかなか入手しづらくて。
友人たちが入手に協力してくれて、助けられました」

――何を売って稼いでいるんですか?

「最近は、友達とENMクエストに挑戦して、高級素材のガラティーアや毛繻子が出たら僕が加工して、売れたら儲けを分配……っていうのをよくやってます。
ついでにスキル上げさせてもらってるんで、失敗してロストしちゃったこともありますが……(笑)
あとは、たまにフィールド装備やシアー系、ノクト系、トレダー系とかのHQを狙って作ってるぐらいかな」

――今まで修行に使ったお金と儲けたお金はどちらが多いですか?

「たぶん儲けたほうだと思うんですが……ほかの合成で儲けたお金のほうが多いかもしれません(笑)
裁縫レシピは消耗品が少ないんで、中古品が出回りやすいんですよ。
どんどん売れるものではないんで、まめに競売をのぞいて、需要がありそうなものを作る感じですね」

――こんなものを作りたい!ってアイテムはありますか?

「男性向けのフォーマル衣装!
女性にはオパーラインドレスがあるので、男性専用の結婚式で着られるような素敵な服がほしいです」

――今まで合成したもので一番思い出に残っているものを教えてください。

「いろいろあって悩みますねぇ。
バーミリオクロークとか、友人に頼まれて銘入りで作ったものが思い出深いです」

――では、最後にメッセージをお願いします。

「防具は性能だけじゃなくて、見た目でいろいろ買ってもらえるとうれしいです!
あと、自分で作った服は愛着がわくので、簡単なものからでもぜひ挑戦してみてください」

――ありがとうございました。

自分で作ったという装備で現れたUさん。
穏やかに話す様子からは、金儲け目当てではなく、趣味として合成を楽しんでいる姿勢が伝わってきた。
人にぬくもりを与える服は、彼のような温かい心を持った職人の手によって生み出されるのだ。

text by Takashi and Asami Watanabe 
Illustration by Mitsuhiro Arita