Tzee Xicu (827 - )
ヤグード教団の現指導者であり信仰対象。
第七次ヤグード戦役(※1)後、ギデアス近郊に入植した武装農家の第十九子(※2)として生まれた。しかし数日後、連邦軍の夜襲に巻き込まれて一家は離散。まだ雛だったシシュは敵兵のミスラ族獣使いに拾われ、育てられた。その後、共通語を教え込まれ、美声の珍鳥としてウィンダスの酒場で歌わされていたらしい。

4歳の頃、決死の脱出行の末、シシュは何とかギデアスに帰りついたが、ヤグード語を解しなかったため異端審問にかけられ、処刑されることとなった。しかし、たまたま尋問を傍聴していて彼女の美声を耳にした神聖戦闘楽団の楽長が熱心に根回ししたおかげで助命され、楽団に迎え入れられたようだ。

その後、声楽家として名を知られるようになると、シシュの運命は急転。その声が神の音域に達しているとして当時の現人神ソー・ルマが神託を下し、彼女はアバター(神の化身)に認定された。
858年、次代の現人神となったシシュには、すぐに大きな難問が立ちふさがった。闇の王率いる獣人連合軍が大挙ミンダルシア大陸に上陸。教団に対して服従を迫ったのだ。
当初は徹底抗戦を命じたシシュだったが、闇の王の圧倒的な軍事力を目の当たりにして断念。シシュは神でありながら頭を垂れる屈辱に耐えて闇の王に謁見し、忠誠を誓った。

いったん王の軍門に降った後は、他種族獣人兵への教義の浸透を主目的に切り替え、シシュは積極的に軍務にあたるようになり、やがて始まった水晶大戦においては自ら陣頭に立って勇戦。目覚ましい戦果を挙げた。特に聖都ウィンダスを二度目に攻めた際には、あらかじめ都市防衛の要であったカルゴナルゴ砦を耐魔装備した特殊部隊で包囲して無力化した上で、かつて自らも脱出に使用した魔法防衛機構の盲点から都市内に侵攻。最終局面で連邦の英雄カラハバルハによって撃退されたものの、聖都に壊滅的な打撃を与えることに成功したため、闇の王に「余なくとも、いずれ奴が人間を滅ぼしていただろう」と言わしめたと云う。

やがて敗色が濃厚となり、闇の王討死の報に各獣人部隊が四散する中、シシュ旗下のヤグード教団軍のみは軍の体を保ったまま粛々とオズトロヤ城に帰還。数十倍に膨れ上がったアルタナ連合軍を相手に奮戦したが、刀折れ矢尽きた挙句、もっとも不得手とするミスラ海兵隊に城内に侵入されてオズトロヤは陥落。シシュも行方不明となった(自刃したとする説もある)。

その後、ウィンダス連邦軍によって武装解除され、信仰の対象をも失ったヤグード族は、大量の餓死者を出すまでに落魄していたが、871年、突如信者の前に再びシシュが姿を現し、復活を宣言。
彼女の指導の下、意気を取り戻したヤグード族はオズトロヤ城を再建し、再軍備を開始している(※3)。

※1
第七次ヤグード戦役:812年、西サルタバルタを戦場に、当時の現人神ネー・ルファ率いるヤグード教団軍とウィンダス連邦軍との間で数年にわたり繰り広げられた戦い。連邦軍内の戦闘魔導団とミスラ海兵隊の反目に眼をつけ、海から陽動したルファの作戦が功を奏し、連邦軍は大敗。以後、西サルタバルタは数年にわたってヤグード教団に占領され、聖都の目と鼻の先に城塞都市ギデアスが構築された。

※2
第十九子:その家で十九番目に孵化した子。通例、孵化しなかった卵は数えられない。

※3
短命なヤグードにしては、シシュは異常に長命であるため、甲高い声こそ似せているものの、復活したシシュの仮面の下は、若い別人ではないか、とする獣人研究家もいる。


Illustration by Mitsuhiro Arita