大陸を分断する長大な河川、豊かな水を湛える無数の湖沼、そして未だ見ぬ世界まで繋がる大海原。そこは未知の生物が数多く棲息する、もうひとつのフロンティアである。なかでも釣り人に「大物」と呼ばれる巨大魚には、漁師なら一度はアタリを夢見る稀少な魚も多い。

さて、そのような大物を釣り上げた冒険者漁師たちが、その大きさを競っていることに目をつけた漁師ギルドでは、釣りを振興して漁獲量をアップするため、「フィッシュランキング」なる大物釣り競争を開始するそうだ。
そこで、編集部は漁師ギルドとタイアップ。漁師から情報を集め、ランキングの対象になるかもしれない巨大魚を分析してみた。
なお、これらの情報は生物学者クラボエール男爵監修の下、極力釣り人特有の誇張や風説を排除したが、すべて正確ではないであろうことをお断りしておきたい。

ググリュートゥーナ [Gugru Tuna]
ググリュー洋の表層を、群れを成して高速で回遊している巨大魚。全長:約120Im。大きな背ビレと身体を走る鮮やかなストライプが特徴的。バストアサーディンのような魚類を好んで捕食するため、釣り人はトローリングで狙うのが一般的だ。東方では同様の魚が高級魚とされており、スシの主役として珍重されている。

オオナマズ [Giant Catfish]
水草の繁茂する湖沼の泥底に好んで潜む、鱗のないヌメヌメした表皮の巨大魚。全長約112Im。視界の悪い場所を住処とするため眼は小さいが、代わりに長いヒゲが感覚器の役割を果たしており、カエルなどの獲物が不用意に近づくと、その微弱な振動を素早く感知し、大きな口で一飲みにしてしまう。元々はクォン大陸にしか棲息していなかったが、誰かが放流したのか近年ではミンダルシア大陸等でも繁殖が確認され、在来種の魚の減少が懸念されている。

モンケオンケ [Monke-Onke]
ミンダルシア大陸南部やエルシモ島の湖沼や河川に棲息する巨大な淡水エイ。全長約110Im。普段は鮮やかな斑模様の身体を砂泥底に隠し、ザリガニ等を捕食しているようだ。なお「モンケオンケ」の名は、美食家で知られた古代ウィンダスの族長と同名であり、一説によると彼が食事の時に召使いのミスラに仰がせていた巨大な団扇に似ていることから命名されたらしい。尾にはチョコボですら一撃で倒す猛毒の毒腺があることで知られる。

三眼魚 [Three-eyed Fish]
シュ・メーヨ海に棲息する3つの眼を有する奇怪な大魚。全長約78Im。その生態はいまだ謎の部分が多いが、強い縄張り意識と恐るべき生命力で知られる。ある漁師が釣った三眼魚をダガーで締め、売るために3日かけて町に行き網びくから取り出したところ、飛びついて噛みつかれたと云う逸話もあるほどだ。クラボエール男爵の学説では、三眼魚は本来違う形状・生態の魚であったとされ、次のように紹介されている。この世界ははるか昔の天変地異により汚染されており、あまねく生物もまた然り。中でも、その源であったと思われるシュ・メーヨ海は、その汚染物質が高濃度で残留しており、それを端的に表している証拠が三眼魚である、と。

ブレードフィッシュ [Bladefish]
シャープな紡錘形の銀色の身体と刃のような鋭い歯から、[ブレードフィッシュ(刃魚)] と呼ばれている巨大海水魚。全長約114Im。クォン・ミンダルシア両大陸の南部沿岸で発見報告があり、回遊魚なのかもしれない。胃の内容物からバストアサーディンやブルーテール等の魚類を主食としていることは分かっているが、ブレードフィッシュの歯形が殻についたウラグナイトの死骸も発見されており、かなり悪食のようだ。かつては船底をかじるとされ、漁師たちに沈没の原因として怖れられていたが、今ではそれらの多くはサハギンの所為だったのではないか、と考えられている。

タキタロ [Takitaro]
クォン大陸の何処かの湖に棲むと云う怪魚。全長約 94Im。今でこそ幻の魚と化しているが、伝承によれば、元々は海洋貿易が盛んであったタブナジア侯国が、東国の王から内乱鎮圧に戦艦を貸してくれた礼にと、大変な費用をかけて生きたまま贈られた魚だったらしい。その後、魚好きの修道士によって他の湖沼にも運び込まれ、最盛期には修道院の月に一度の晩餐にものぼるほど数多く棲息していたようだ。非常に長寿で何十年もかけて巨大に成長するため縁起がよいこと、また持久力があるため食すると精がつくことも、人気の秘密だったようだ。

ティタニクティス [Titanictus]
ヴァナ・ディールの太古の海を支配していたと考えられる肉食の巨大魚。全長約200Im。「甲冑魚」という硬い骨板で頭部が覆われた古いタイプの魚に属し、近年実際に冒険者が釣り上げるまでは化石でしか存在を知られていなかった。強大な顎を有するものの、泳ぐ速度が遅いため高速の魚には対応できず、ゴールドロブスターのような甲殻類やコーンカラマリ、ウラグナイトといった頭足類を主食とし、巨体を維持しているようだ。

Illustration by Mitsuhiro Arita