![]() 記者は、がっくりと肩を落としたひとりの漁師に遭遇した。 タルタルの漁師Nさん……あまりの落ち込みっぷりに声をかけたところ、漁師ギルドから師範として認められているにも関わらず「フィッシュランキング」で、ランキング外となってしまったという。 「フィッシュランキング」とは、エントリーされた大型魚の大きさ・重さを一定のルールのもとで競い合う、漁師ギルド主催ではじめられた定期イベントである。開催されるたびにエントリーを受け付けるテーマフィッシュは異なり、審査の基準も変わるのだそうだ。そして20位以内にランクインすると記念品の「ペリカンリング」が、10位以内の人には記念品に加えて称号と賞金が授与されるのである。 その栄えある第1回のエントリーが締め切られた今日、ランキング結果が発表され「フィッシュランキング」参加者たちの明暗が分けられたのだ。 「今回のテーマフィッシュはオオナマズで、いちばん体長が長いものを持ってきた人が優勝だったんです。ボクは海釣りメインでやってたんで、あまりオオナマズを釣った経験がなく、どのぐらいの大きさで優勝を狙えるのか全然予測できなかった。 ボクが釣ったなかでいちばん大きかった118lmのオオナマズをエントリーしたんですけど、記念品をもらえる20位以内に入った魚は最低でも121lmでした」 なお、優勝者がエントリーしたオオナマズは126lmだったそうだ。 「そもそも、今までは釣る魚の大きさをあんまり気にしたことがなかったんですよ。大きくても小さくても売れる値段は一緒だし、切り身にしたときの個数も変わらないし。今回のテーマフィッシュを聞いてからあわててオオナマズを釣りに行ったんだけど、受付期間中にいい魚を釣りあげるには、かなり運が必要だなと思いました。 自分で釣ったものの大きさに自信がなくて、競売所で何匹か落札してサイズを見てみたり……」 漁師ギルドに所属していない冒険者でも参加できるため、意外なところに強敵が潜んでいたのかもしれない。 「ランキングを見て驚いたのは、入賞した人の多くが、自分より釣りのスキルが低かったことです。師範同士の競争になるかなって予想してたので、意外でした。釣れる魚の大きさは、釣りの腕前と関係ないので、よく考えたら当然なのですが……なんというか、考えが甘すぎましたね。これは、師範としてもっと頑張らなければと思いました」 公開期間中に閲覧できるランキング結果には、入賞者の名前と釣り上げた魚の大きさのほかに、その人の釣りスキルのランクも記されている。彼らに与えられた記念品「ペリカンリング」は、エンチャントを使用すると釣りスキルの習熟速度が速くなるという効果を持った指輪だ。 「実はボク、既に釣りスキル100なんで「ペリカンリング」は必要ないんです。でも、漁師としてこの称号はとても欲しい」 そう語るNさんの目が鋭く光った。 ![]() 「次回の魚はまだ何になるかわかりませんけど……もう自分のなかで戦いは始まってます。釣った大型魚は全部、体長、重さ、総合が大きいものと小さいものを保存して、ノートに記録として残すように対策を立てました。 もちろん、記録になるような魚が釣れないと意味がないんですけど……でも、記録していたら、魚の大きさにはかなり差があることがハッキリわかるようになりましたね。 大きな魚と小さな魚では、大きさの数値が倍以上になることもあるんです。 ……次回は優勝を狙います!」 この記事が発行されるのは、「フィッシュランキング」第2回の受付期間も終盤で、まもなく結果が発表される頃だろう。はたしてNさんは、笑っているだろうか、それともまだ必死で釣りに励んでいるだろうか……。 漁師たちに新たな目標を示した「フィッシュランキング」。称号や「ペリカンリング」を手に入れたい人は、ぜひ挑戦してみてはいかがだろうか。 text by Takashi and Asami Watanabe
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