錬金術は、モンスターの身体の一部や薬草などを調合し、さまざまな効果を持つ薬品を作り出すことが可能な技術だ。錬金術によって合成された薬品の用途は、服用するだけではなく、特殊な効果を付与した武器を作り出すための素材にすることもできる。そのため、これらの薬品は強敵との戦闘を繰り返す冒険者の必需品として、競売所でもつねに安定した価格で取り引きされている。
需要の高さから、自分で作れるようになれば……と考えている冒険者も多いようだ。

錬金術師範階級の職人は、いったいどんな日常を過ごしているのだろうか?

今回は、錬金術職人のVさんに話をうかがった。

――こんにちは、今日はよろしくお願いします。
Vさんは錬金術職人だそうですが、現在のスキルはどのぐらいですか?


「100です。ほかの合成は、鍛冶と調理が60で、彫金が40。あとは全部、素人程度です」

――なぜ、錬金術の道を選ばれたのですか?

「錬金術って、なんとなく妖しいイメージがあるので、それに憧れて(笑)。
やってみたら、実際はそんなに妖しくなくて、取っ付きやすい合成でした」

――なるほど。冒険者としての腕前はどのぐらいでしょうか?

「黒魔道士と白魔道士と赤魔道士が75です。魔道士系しかやってないんですよ。普段は移動が便利な白/黒か黒/白でいることが多いです。」

――冒険者としてのレベルが高くないと、錬金術の道を進むのは大変だと思いますか?

「そうですねぇ……薬品を作るのに使う素材は、お店や競売で買えるものがほとんどなんだけど、需要が高いので、競売ではすぐに売り切れちゃうんですよ。
とくに、ハイポーションを作るときに使うモルボルのつるとか。大量に使うんで、自分でモルボルを倒せるぐらいのレベルがないと大変だと思いますねぇ」

――サブスキルは必要ですか?

「薬品を作るだけならほとんど必要ないです。あると便利程度なのが鍛冶と彫金。鍛冶は武器とか、鏃を作るときに役立ちます。
彫金はミノーとか、釣りで使う疑似餌を作るときに役立ちますねぇ。あとは木工とか裁縫とか使うレシピもあるけど、数は少ないのでどうしても作りたいものがあったら上げる感じでいいと思いますよ」

――素材集めは大変ですか?

「お店で買えるものも多いんだけど、どこで何を売ってるかを把握するのが重要ですね。あと、競売を利用するときは、自分で狩りに行ったらどのぐらいの時間がかかるのかと、そのときの相場を計算して、あまりに高かったら自分で取りに行きます。
よく使う蜂の巣のかけらとか、最近は高いので、自分で取りに行くことが多いですねぇ。
なかには、ものすごく強いノートリアスモンスターしか落とさないような素材もありますけど、そういうのは使わないでもスキル100までいけますよ」

――何を売って稼いでいるんですか?

「やはり薬品ですねぇ。ハイポーション、サイレントオイル、毒薬、やまびこ薬がおもな収入源です。
あとは、ここ最近アニマでも稼いでますね。
武器防具のHQ品はたまに狙ったりしますけど、思うようにできなくて、NQ在庫の山になることが多いです(笑)」

――今まで修行に使ったお金と儲けたお金はどちらが多いですか?

「ふふ(笑)……もちろん儲けたお金です。スキル上げをしてたときは、たまに赤字になっちゃうレシピもあったけど、なるべくマイナスは少なくするように気をつけてました。
ハイポーションが作れるぐらいのスキルになると、サイレントオイルのHQが出やすくなってできる個数が増えるから、この辺から一気に稼げるようになりますよ」

――今まで合成したものでいちばん思い出に残っているものを教えてください。

「ワックスソード+1……2年以上前に初めて作ったHQ品で、まだ倉庫に大事に取ってあります。あと、初めて闇の王を倒したとき、自分で作ったハイポーションが大活躍したので、うれしかったですねぇ。
錬金術やっててよかったって思いました」

――これは自分で作りたい! ってアイテムはありますか?

「バイルエリクサー……あのぐらいすごい性能の薬品を作れるようになりたいです! あとは、魔道士が装備できる装備品がないので、作れたらうれしいですねぇ」

――では、最後にメッセージをお願いします。

「自分で薬品を作れると、出費を抑えられますよ。師範までは大変だけど目録ぐらいまでなら手軽なので、ほかの合成職人を目指してる人にもオススメです。
お金稼ぎしたい人にも向いてますよ!」

――ありがとうございました。

錬金術は想像するほど妖しくないとVさんは言うが、ベテラン魔道士でもある彼女は、インタビュー場所となった錬金術ギルドの中でも、ひときわミステリアスなオーラを放っていた。

まるでワインでも勧めるかのように、「よかったらどうぞ」とバザーから毒薬を差し出してくれたVさん。彼女のような謎めいた人の手から、数々の薬品が作り出されるのだ。

text by Takashi and Asami Watanabe 
Illustration by Mitsuhiro Arita