Jakoh Wahcondalo (852 - )
カザムの族長。傭兵をしていた母親に連れられ、幼少の頃タブナジア侯国に渡った。職業がら母親は家を空けることが多かったが、侯都の有名私塾に通わせてもらい、読み書きや算術を学んだ。

11歳の折、戦争で侯都が陥落。避難民を満載して出港する商船に、母親の力で何とかジャコだけ乗せてもらったが、やがてその船も転覆。十数日ものあいだ洋上を漂流した末、バストア海賊ギルガメッシュに拾われて、九死に一生を得た。

871年、ノーグで海賊見習いとして働いていたジャコに、大きな試練が訪れた。エルシモ島近海の縄張りを巡って、バストア海賊とカザムの漁師の間で刃傷沙汰が発生。双方一歩も主張を譲らず、両者代表の決闘で領海線を決することとなったが、様々な思惑が重なった結果、まだ若く実戦経験もないジャコが何故か海賊代表に選出されたのだ。しかも、対する敵側の代表は、カザム随一と評判のブーメランの使い手「首狩りポリィ」。しかし、大方の予想を覆してジャコは母の形見の短剣一本で見事勝利し、一躍ノーグの英雄となった。

その決闘を間近で見ていた当時のカザム族長ロマー・ミーゴは、ジャコのとっさの判断力と胆力を気に入り、約束を守って領海取り決めで大幅に譲歩しただけでなく、ジャコがカザムに移住することを条件に、それまで食糧不足に悩んでいたバストア海賊に食品輸出を許可する旨を提案。ジャコは「道は自分で選ぶものだ」というギルガメッシュの言葉に悩んだ末、住み慣れたノーグに別れを告げ、カザムで護衛兼書記としてロマーに仕える道を選んだ。

879年、ロマーは隠居を決め、全村集会において後継者にジャコを提案。最初の頃こそ、ロマーの独断で住民となったジャコに対して批判的だったカザムの住民も、その頃には彼女の海賊ゆずりの大胆な行動力と飾らないきっぷのよさに好感情を抱くように変わっていたため、ほぼ満場一致でジャコは族長に選出された。

族長就任後、硬軟とり混ぜた交渉力と旧知の海賊を利用した情報収集力を大いに発揮して、ジャコは村の経済発展に寄与。それまで一辺境に過ぎなかったカザムを、たった数年で南方のミスラ本国や北方のウィンダスといった大国でさえその意向を無視できない独立勢力へと変貌させ、ロマーの慧眼は証明されたのだった。

Illustration by Mitsuhiro Arita