魚や動物の肉、農作物、香辛料などを組み合わせて、さまざまな食品を作り出す調理。職人の合成する料理は、戦うための活力となるため、こだわる冒険者は少なくない。もちろんそれだけではなく、美味しさを追求することは人生の楽しみでもあるのだ。

あらゆるレシピをこなす調理師範の職人は、いったいどんな日常を過ごしているのだろうか?

今回は、調理職人のDさんに話をうかがった。

――こんにちは、今日はよろしくお願いします。
Dさんは調理職人だそうですが、現在のスキルはどのぐらいですか?


「98です。100を目指してるけど、のんびりやってます。ほかの合成スキルは錬金術が60、木工と釣りが50、あとは全部30以下です」

――なぜ、調理の道を選ばれたのですか?

「なにか合成やりたいなーって思ってたんだけど、当時はあんまりお金なかったんです。そこで、元手が少なくても手を出せたのが調理だったの(笑)。最初は、自分が食べたり友だちにあげたりできたらいいなー程度にしか考えてませんでした」

――なるほど。冒険者としての腕前はどのぐらいでしょうか?

「戦士とシーフが75です。あとは、40〜60ぐらいのジョブが6つ。普段はシーフ/白魔道士で行動してることが多いかな」

――冒険者としてのレベルが高くないと、調理の道を進むのは大変だと思いますか?

「レベルが低くても大丈夫ですよ。食材はお店で買えるものが多いし、売られていないものでも競売所で出回ってることが多いので」

――サブスキルは必要ですか?

「なかには錬金術や木工のサブスキルを使うレシピもあるけど、数が少ないので絶対に必要ではないです。ただし、調理でよく使うメープルシュガーは木工のレシピなんで、これが作れるところまでは上げておくと便利!あとは釣りですね。自分で釣りができると、かなり出費を抑えられます」

――食材集めは大変ですか?

「特産品はこまごまと売場が分かれてるし、週によってどの国で売られるか変わるので、ちょっと面倒くさいというのはありますね。競売で食材を買っても黒字になるレシピは多いけど私はケチなので、自分で取りにいったり栽培したりして集めてます。魚は自分でも釣るけど、よく漁師さんの友だちに頼んで釣ってきてもらってます。お礼に料理をプレゼントしたり、物々交換。キノコとか肉類も、友だちからもらうことが多いですね。やっぱりこちらも料理でお礼です(笑)」

――何を売って稼いでいるんですか?

「そのときによっていろいろです。最近よく売るのはスシ類、タブナジア風タコス、ヤグードドリンク、メロンパイ、イエローカレーとか。でも、食事はレベルによって最適なものが違うから、売れ筋のものが他にもたくさんあるんですよ。出品が少ないものや、クエストで使われるものを狙って出品してます。あと、材料持ち込みで合成の依頼を受けることも多いです。なかなか、欲しい食事が売られてないって声も多いんですよねぇ」

――今まで修行に使ったお金と儲けたお金はどちらが多いですか?

「正直、調理を始めた頃はこれで稼げるとは考えてなかったんですが……地道に儲かってますねぇ。食事って消耗品なんで、売れるスピードが速いんですよ。修行中は売ったら赤字になっちゃうレシピもあったけど、そういうのは自分で食べてました(笑)」

――今まで合成したものでいちばん思い出に残っているものを教えてください。

「スタミナスープですね。スッポンスープのHQ品なんですけど……。友だちにプレゼントしようと思って、どうせなら珍しい料理がいいかなと作ったら、HQ品ができちゃったんですよ。ふと競売所を見たら、誰も出品した履歴がなかったので、自分で落札履歴作ってみました。それから、最初の履歴を作るのが快感になっちゃったんです(笑)」

――こんなものを作りたい! ってアイテムはありますか?

「麺合成を使ったレシピで、パスタ系以外にラーメンとかお蕎麦とかがあったらいいなーと思います。あとは、ねりわさびを自分で栽培できたらうれしいですね。高いので(笑)」

――では、最後にメッセージをお願いします。

「食事はとても需要が高いので、自分で作れると本当に便利!ほかの合成を極めようと思っている人でも、目録まで上げておくときっと役立ちますよ〜。調理を極めれば、文字どおり、食べることに困りません!」

――ありがとうございました。

作るのも好きだけど、食べるのはもっと好きというDさん。取材場所となった調理ギルドは、ほかの調理人がHQ品を作れば拍手、失敗すればなぐさめ、自然に会話が弾む空間だった。「ここはいつもこんな感じですよ。調理のこういう和やかな雰囲気も好きなんです」

彼女が鼻歌を歌いながら焼いてくれたケーキは、とても美味しかった。

text by Takashi and Asami Watanabe 
Illustration by Mitsuhiro Arita