皇国手配書2 (2006/12/05)

下に記す者は、我が皇国を脅かす怪物の中でも、とりわけ悪名高い怪物たちである。
腕に覚えのある傭兵ならびに冒険者諸君は、こぞって討伐に参加されたし。


ケルベロス〔Cerberus〕

この怪物は、トロールどもの軍都ハルブーン周辺で傭兵諸君からの目撃報告が相次いでいる、大きな三つ首の魔犬である。剣を徹さぬ鎧のごとき硬い漆黒の外皮と、鎧を貫く剣のごとき鋭い爪を特徴とし、すでに多くの同胞が犠牲となっている。

また、この怪物がトロールの首領グーフールーの猟犬である、とする説もある。それが本当ならば、いつ何時、彼によって皇都攻撃に連れてこられてもおかしくはない。傭兵諸君は可及的速やかに、このケルベロスを退治すべく奮闘努力してもらいたい。


ハイドラ〔Hydra〕

この怪物は、ワジャーム樹林の奥地に棲息している巨大な三つ首の龍である。作戦中ハイドラに襲われた義勇軍中隊の生存者の話によると、竜胆色の分厚い鱗に矢や魔法はことごとく阻まれ、三つの首から次々と吐かれる猛毒の息によって兵士は訳もわからず、バタバタと絶命していったとのこと。

我が軍では、これまで単なる辺境の怪物と目していたが、マムージャどもがこの怪物の餌付けを試みている節があり、もし成功すれば、皇都攻略に利用されるのは必至であろう。
傭兵諸君は、その計画を未然に防ぐため、このハイドラを早急に討伐してもらいたい。


キマイラ〔Khimaira〕

この怪物は、ハルブーン、そして最近ではヘディバ島でも目撃報告のある魔獣である。しかし、大羊のごときねじくれた角。獅子のごとき金色のたてがみ。蝙蝠のごとき矮小な翼。蛇頭のごとき猛毒の尾。そして、ベヒーモスのごとき紫苑色の皮膚と、その報告は著しく一貫性を欠き、いまだその存在さえ怪しまれているのが現状である。

だが、それらすべてが事実であるとすれば、新手の合成獣であることは疑いようがない。よって傭兵諸君は、この仮称「キマイラ」のさらなる情報収集に努めてもらいたい。

なお、巷で囁かれている、このキマイラは我が国が開発した生物兵器である、との説は根も葉もない噂にすぎない。風説に惑わされることなきよう、注意されたし。


〜皇国軍広報官シャザーシュ〜


Illustration by Mitsuhiro Arita