ブレイジングバッファロー 〜ちいさなちいさな特ダネ〜  (2014/09/04)

ハァイ!
ウィンダス、魔法新聞社のコナナでっす!
みんな、ゲンキに冒険してるぅ!?

……あら、ちょっと若作りしすぎたかしら?
っと、そんなことはどうでもいいんだった。

大変なの!
冒険者のみなさんにも聞いてほしいことがあるのよ。

あの白いモコモコたち──モーグリたちのことよ、もちろん。
あいつらの経営しているBBQ牧場を知ってるわね?

北方から野牛を捕まえてきて飼ったりしてるあれよ。
野牛追いのイベントに貸しだしたり、最近だと牛以外も扱い始めてて、
つまり手広く商売しちゃってるように見えるわけ。
なのに、経営はいまだに赤字続きでどうしてだろうって。

ね? ちょっと気になるでしょう?

でぇ、あたしたちは優秀な記者を雇って潜入取材させてみたってわけ。
もうじき、野牛追いの祭りも始まるしさぁ。
記事としてはピッタリだと思うのよ〜。

ほら、読みたくなったでしょ?

ジェントル・オックスは、名前からわかるとおりガルカで、フリーのライターだった。
いつもはバストゥークの街で記事を書いている。
この夏から、短期契約でウィンダスの魔法新聞社に出向していた。
契約が決まったとき、同郷の記者連中が「お気の毒に」と言った。
理由はさっぱりわからなかった。

出向してみると、与えられた机も椅子も全てタルタル基準で、
オックスは常に肩をすぼめて座って記事を書くことになったけれど、
それでもとくに不満は感じなかった。

その日、いつものように誰よりも早く出社したオックスは、
机の上にコップ1杯の冷えたミルクが置いてあるのを目にした。
コースターの脇には、「お仕事お疲れ様です。どうぞ」の書き置き。
深く考えもせずにオックスは、素敵に冷えたミルクを喉の奥へと流し込んだ。
季節は秋だったが、その日は夏の日差しが残る暑い日だったのだ。

たちまちオックスの身体に異変が起こる。
大きな身体はみるみるうちに縮んでいって、《チゴー》と呼ばれる小さな虫になってしまった。

「ど、ど、どうしてこんなことに!?」
机の上をぴょんぴょんと跳ねまわるが、何が起こったのかオックス自身にも把握できていない。

「やあ、見事なチゴーっぷりだな、オックスくん」
「へ、編集長!?」
『週刊魔法パラダイス』のナイコ・パニィコ編集長だった。
編集長は、椅子の上に乗って、チゴーになったオックスを見下ろしながら、
「そのミルクは《ミラクルミルク》だ」と言った。
「ミラ……なんですって?」
「効果時間は約1日だ」
「い、1日!? 今日いっぱいこのまま!?」
「そこで君の使命だが──」
「って、何を平然と事態を進めちゃってるんですか!」
「だって、君はもう、お礼のミルクを飲んでしまっているじゃないか」
「ぇ!?」
「だから、君はこれからわたしの命じる仕事を受けるのが当然というわけだよ」
「あ、あれは、これから受ける仕事に対しての『お疲れ様』だったんですかー!」
「そうだとも」

ジェントル・オックスはようやく悟った。
そうかこれがあいつらが「お気の毒に」と言った理由か。

「というわけで君には、BBQ牧場で不正が行われているかどうかの調査をお願いしたい」

モーグリたちの経営するBBQ牧場は、
牛追い祭りの野牛を始め、手広く獣の世話を始めている。
それほど商売を広げているわりには赤字から脱け出せていない、という噂だった。

「ま、まさか、俺にこの姿のままで……取材しろと?」
「その姿ならばモーグリたちに警戒されんだろう?」

というわけで、オックスはモーグリたちの営むBBQ牧場まで連れていかれた。
お礼は先払いだと言われて、納得してしまったのだ。
オックスは、繊細で穏やかで真面目な性格のガルカだった。

──とはいえ、チゴーになって牛の背中で取材することになるとはなぁ。

人生はわからないものだと、オックスは牛の毛のなかに潜り込みながら思った。
野牛の毛は、小さな虫の身体からは、天を覆うほどまでに育った絡まりあう木々に見えた。

夕方になるまで待った。
モーグリたちの鳴らす鐘に促されて牛たちが次々と牛舎へと帰る。
オックスを乗せた野牛も、空が薄墨色へと変わる前に小屋へと入った。
牧童たちがやってきて、おしゃべりしながら牛たちの世話を始めた。
餌をやり、毛並みを整えるためにブラッシングも行っている。
牧童モーグリたちは仕事をしながら、ぽつぽつと牧場の話を始めた。

お祭りで野牛のミルクを配布したことはあるが、もっと関連商品を売りだせないものか。
そんな相談をしているようだ。

──彼ら自身も売り上げが伸びないことを心配しているようだな。なるほどそうか、その理由は……。

夢中になって聞き耳を立てていたから、
オックスは自分の乗っている牛を牧童たちがブラッシングし始めたことに気づかなかったのだ。
オックスの全身がざばりと水に濡れた。
それから、何か硬いものが全身に叩きつけられ、強引に水とともに身体を浚われて……。

 ★ ★ ★

「ほうら、頑丈なガルカの君に行ってもらってよかったろ」
編集長の言葉に、全身を包帯で巻かれたオックスが眉を下げながら応じる。
「よくありません。冷えてすり傷だらけになるし。あと、猛烈に恥ずかしかったです」

牧童たちのブラッシング攻めによって、
オックスは、見事に洗い流されて牛舎の床に叩きつけられてしまった。
そこで気を失ったものだから、そのまま変身が解けてオックスはモーグリたちによって、
傷薬を塗られ、包帯でぐるぐる巻きにされ、
丁重に追い出されることになったのだった。

「真っ赤な包帯でぐるぐる巻きになった君が現れたときは、
どうか迷わずに成仏してくれと祈ったものだが」
「そこまで心配してくれるなら、手当は弾んでくださいね」
「う、うむ」
編集長がしぶしぶ頷いた。
「まあ、タネを明かせばこいつはサッシュの切れ端ですよ」
オックスは真っ赤な包帯の端を摘まんでみせた。
正体がわかってみれば驚くことでもない。
「おそらくモーグリたちの作ってる何かのアイテムの余り布じゃないですかね」
「ふうむ。真っ赤なサッシュねえ……すこし調べてみるといいかもしれんな」
腕を組みながらナイコ・パニィコ編集長が言った。

「しかし、ミルクの出荷が少ないのが、チゴーのせいだったとはね」
「ええ。北方から連れてきたときにも、ずいぶんと丁寧にブラッシングしたそうなんですが……」
それでも毛のなかに潜り込んだチゴーの全ては取ることができなかったらしい。

チゴーに刺されることが多いと、
牛たちは、ストレスによりミルクの出が悪くなってしまうのだという。
どうやら、それがBBQ牧場のミルクを大々的に売り出せない原因らしかった。
牧童モーグリたちは、おかげでチゴー退治にものすごく熱心だった。

「で、俺はこのありさまというわけです。化けるなら、チゴー以外にすべきでしたね」
「う、うむ。そのなんだ……あー、す、すまない」
「まあ、危険というほどのことでもなかったですし。それに、ひとつネタを手に入れました」
「ほう?」
「モーグリたちは、もっと効率的な手段を考えたみたいですよ。
つまり、うまくいかないなら、もっとうまくできるやつの真似をすればいいってね」
「ほうほう」
「つまりですね。自分たちが参考にできるように、
獣たちの世話を熱心にやってみせてくれるヤツを観察することにしたようです。
どうすれば獣たちが気持ちよくなるのか。何をすると不機嫌になるのか……をね」
「君、それはつまり……」
「ええ、最近海の向こうで牧場経営が流行っているでしょう?
彼らの話を聞いて参考にすることに決めたみたいです。
もしかしたら、これから何か動きがあるかもしれませんよ」

オックスは、BBQ牧場の牧童たちの会話から、小さな特ダネを拾いあげたのだった。


Story : Miyabi Hasegawa
Illustration : Mitsuhiro Arita

開催期間

2014年9月11日(木)12:00頃 〜 9月25日(木)15:00頃

イベントについて

ベント期間中、以下のエリアに多数の野牛が出現します。野牛の習性をうまく利用してMoogleの近くまで誘導しましょう。まずは、以下のエリアにいるMoogleに話しかけ、詳しい事情を聞いてみてください。

西ロンフォール(I-6)/東ロンフォール(G-6)
北グスタベルグ(L-8)/南グスタベルグ(L-8)
西サルタバルタ(J-8)/東サルタバルタ(G-11)

交換品について

野牛の誘導に成功すると、Moogleからブルマークがもらえます。集めたブルマークは以下のアイテムと交換することができます。
ミラクルミルク/ドローバーマント/レッドサッシュ/ドローバーベルト/ダッシュサッシュ/アルデバランホルン
※2005年に実施したイベント「ブリッツバッファロー」で配布したアイテム「レッドサッシュ」と「ダッシュサッシュ」が追加されました。

制限について

・イベント参加中は制限がかかり、モンスターに攻撃できなくなりますが、モンスターから襲われることもありません。
・エリアチェンジやログアウトを行うと、制限は解除されます。