ハロウィン 〜お嬢様にはできるまい〜 (2014/10/14)

『お菓子をくれなきゃ、いたずらしちゃうぞ!』

そんな台詞とともにお化けに仮装して街を練り歩く季節がやってきたクポ!

でも……。
どんなに怖いお化けでも、慣れれば徐々に怖くはなくなってしまうもの。
ましてや、ハロウィンのお祭りは昼の明るいときにも行われているクポ。

頑張って仮装している街の人々も、
年々、冒険者のみなさんからのお菓子の回収率は下がってきているし、
子どもたちは慣れてきてしまって怖がってくれないし……。
と、そういう話をモグたち聞いているクポ!

でもでも。実はココだけの話。
新しいお化けのコスチュームをモーグリ工房に発注してきた人がいる、
という情報をゲットしたクポ!

もしかしたら、
街のどこかで久しぶりに、こわーい思いをすることになるかもしれないクポ!

冒険者のみなさんも、お菓子の用意は忘れずにクポ!

大工房の煙突があげる煙を視野の隅に収めながら、
ハーナティは生意気盛りの少年の顔をにらみつけた。

「だからさあ、そろそろマンネリだって思うんだよねえ」

顔にニヤニヤ笑いを浮かべてそばかすの少年が言った。
ハーナティは、むっとした気持ちを隠せず、つっけんどんに言葉を返した。

「元はと言えば、モリト、あなたが言い始めたことですのよ!」
「ねーちゃんが、『大人はお化けなんて怖がらない!』って言ったからじゃんか」
「そ、そのとおりです……もの」
「つまり、ねーちゃんは大人だから怖くないわけだ」
「ええ」
「だから、お化けの格好したってぜんぜん平気だ」
「もちろんです!」
「……って、あのときも、ねーちゃん自分で言ったんだよ?」
「あう。そ、そうでした、けどぉ……」
言葉の後半は尻すぼみに小さくなった。

モリトは鉱山区に住む少年だった。
歳はハーナティより五つも下の十二歳。
ハーナティから見れば子どもである。お子様である。ガキなんである。

なのに、どうして毎回こうして言い負かされるのかしら?

商業区の住宅街から離れたことのないハーナティと
鉱山区に住むモリトは、本来ならば出会うはずのない二人だった。
奇妙な偶然が重なって彼とハーナティは友だちになった。
そのときからずっと、ハーナティはモリトに言い負かされてばかりだ。

「だから、ねーちゃんのお化けは、もう怖くないんだってば。
いわゆるひとつのマンネリってやつ?」
「ぐぬぬぬぬ」

ハロウィンになるたびにモリトに煽られて、モンスターの仮装をした。
生来の怖がりが雰囲気に出るのか、
大人も子どもも、ハーナティの仮装を皆あまり怖がってはくれなかったけれど、
それでも、なぜか子どもたちからは大人気で、とっても懐いてくれていた。

「だからって毎年おなじことを繰り返してちゃ、芸人魂が泣くだろ」
「芸人じゃありません」
「だから、ここらでテコ入れがいるんだって! ウケを目指すならさ!」
「……あなたが、あたしをどー見ているかはわかりましたわ、モリト」
「いいから聞いてよ。あのさ。近東には、こんなお化けがいるらしいんだ」

モリトが開いた本は、『近東見聞録』という名の、今年の流行書だった。
「ヴァナ・ディール トリビューン誌」の発行者が編纂したものだと聞いている。

本に描かれていたのは奇怪な怪物の姿だった。
身体の輪郭がぐにゃりとしていてはっきりしない、
言ってしまえばつぶれたプリンのような、
見ているだけで気持ち悪くなってくる怪物だった。

「こ、こんな生き物……本当にいるんですの?」
「ほらほら。怖がってる怖がってる」
「こ、怖くないって言ってますでしょ!」
「じゃあ、こいつの仮装できるわけ? 無理だよねー」
「で、できますわ、これくらい!」
完全に売り言葉に買い言葉だった。

「格好だけマネしたってだめだよ!
なんでもこのモンスターは、出会った冒険者に対して『罵詈雑言』を浴びせたり、
『自画自賛』したりするんだってさ。
ハーナティは、お嬢様だもんねー。『罵詈雑言』なんて絶対むり!」
「で、できるったら、できますの!」

  ★

ハロウィン当日になった。
特注した怪物の衣装は、モーグリの仕立て屋が胸を張るほどの出来栄えで、
着る前から早くもハーナティは後悔をしていた。

でも、モリトに言われっぱなしはイヤですの!

こうしてバストゥークの街に新しい怪物がお披露目になったのだ。
それは近東の怪物『ブラックプリン』だったけれど、
たったひとつ、実在の怪物とは大きく違った性質をもっていた。

「お、お、お菓子をわたくしに与えやがるといいですの!
この、社会生活に不自由しているかわいそうなお金に困っているひとたち!」
ブラックプリンは出会うたびに、恐る恐る申し訳なさそうに言ってくる。

「でもそうね、たしかうちの使用人が先月やめてしまってひとりくらいなら……って、そうじゃなくて、ええとだから、あの──お菓子を、ね? くれたら、うれしいなって。って、ねえ、どうしてそんな憐れむような目で見るの!?
わたし、あ、あなたを罵倒してるんですのよ!」

なぜか、今年は大人たちからも評判がいい。

物陰からじっと見ていたそばかすの少年は、
「ねーちゃんに『罵詈雑言』なんてできないって……わかってたけどさぁ」
とつぶやいた。

今年もハーナティの扮するお化けは大人気だ。
お菓子をくれたひとりひとりに丁寧にお礼を言う彼女に、
周りの大人も子どもも笑顔になっている。

毎年のことながら煽った手前、
こうして離れて見ているしかない自分がちょっと悔しくなるモリトだった。


Story : Miyabi Hasegawa
Illustration : Mitsuhiro Arita

開催期間

2014年10月21日(火)17:00頃〜11月4日(火)17:00頃まで

仮装行列のおばけや獣人に「おやつ」を渡そう!

各国の住民たちは、冒険者の皆さんを驚かすために、おばけや獣人の仮装をして街を練り歩きます。
以下のエリアで彼らに「おやつ」を手渡すと、皆さんも仮装できるようになります。また、運がよければハロウィンにちなんだスペシャルアイテムが手に入るかもしれません!

南サンドリア/北サンドリア
バストゥーク鉱山区/バストゥーク商業区
ウィンダス水の区/ウィンダス森の区
※「おやつ」は、主に料理のスィーツ類です。
 ただし、スィーツの中にもNPCにトレードできないものがあります。


また、今回のハロウィンではフラン族に仮装した住民がいるようです。フランにちなんだ新しいアイテムが手に入るチャンスなのでいつもより多めに「おやつ」を準備しておきましょう!


▼フランに扮した住民が練り歩きを行うエリア
北サンドリア/バストゥーク商業区/ウィンダス水の区

モーグリに協力しよう!

ハロウィンの仮装行列に紛れて街に入ろうとしているモンスターがいるようです。モーグリたちは報酬を用意して、モンスター退治に協力してくれる冒険者を待っています。まずは、以下の場所にいるモーグリから話を聞いてみましょう。

西ロンフォール(I-6)/東ロンフォール(G-6)
北グスタベルグ(L-8)/南グスタベルグ(J-7)
西サルタバルタ(J-8)/東サルタバルタ(G-11)

仮装をもっと楽しもう!

ハロウィンの開催期間中、各国の会場にはボムの飾り付けが設置されます。特定の仮装をした2人がパーティを組んで、この飾り付けに近づくと、何か良いことが起こるようです。

交霊祭に参加しよう!

今回も、西方のエクソシストによる「交霊祭」が行われるようです。以下の場所にいるエクソシストから、詳しい話を聞いてみましょう。

北サンドリア(D-8) Gertrude
バストゥーク商業区(G-8) Brian
ウィンダス水の区(北側)(F-5) Roger
※エクソシストからの依頼を達成した場合、ヴァナ・ディール時間で1日が経過していないと再度依頼を受けることができません。

特設店で買い物をしよう!

以下の場所には特設店が設置され、ハロウィンにちなんだアイテムが販売されます。さらに、各国の特設店で購入できる3つの燭台をモグハウスに飾り、しばらくしてからモグハウスのモーグリに話しかけると素敵な贈り物が……。
※贈り物はイベント終了後も条件を満たしていれば受け取ることができます。

北サンドリア(D-8)
バストゥーク鉱山区(H-9)
ウィンダス水の区(北側)(G-10)