ヴァレンティオン (2015/01/27)

あなたとわたしの記念日、ヴァレンティオン・デー。

プレゼントに想いを込めて気持ちを伝えたその日。
大切な思い出であればこそ、目に見える形で残るものが欲しくなる──。

MHMUでは、ヴァレンティオンの日の思い出を残すべく、
カップルに互いの名を刻んだアイテムを渡す企画を行っていますクポ!

魂の絆を永遠に残してみませんか?

今年のヴァレンティオン・デーでは、MHMUは新たな贈り物を用意して、
皆さんの参加をお待ちしておりますクポ!

思い切って、大切なひととペアを組んで挑戦してほしいクポ!

そう……サンドリアの街の片隅にも、そうやって頑張った少女がひとり……。

南サンドリア、東門前。
MHMUから派遣されたモーグリから、イルシュールは重大な情報を聞きだしていた。

「ハートの……エプロン、だと?」
まるで男のような話し方だが、イルシュールはエルヴァーン族の少女である。
背が高く肩幅が広いがっしりとした体格で、格闘家、つまりモンクだった。
しかも17歳。
これでも一応たぶん乙女である。

イルシュールは、モーグリがひらひらさせている水彩画を食い入るように見つめる。
描かれていたのは、赤い格子柄の可愛らしいエプロンだ。
腰の右あたりに大きなハート模様のポケットが付いている。
「かわ……いい……」
イルシュールはごくりと唾を呑む。

彼女はこう見えて、アドゥリンにも頻繁に訪れるだけの実力をもっている冒険者だ。
だが──誰にも内緒だが、実は可愛いものが大好きなのだ。
繰り返すが。
これでも一応たぶん乙女なのである。

「今年のヴァレンティオンのために、モグ工房がやってくれましたクポ」
「確かに……こいつはやってくれやがったな!」
「お気に召しましたクポ?」
ただでさえ糸のように細い目をさらに細めて、にやりとモーグリが微笑んだ。
「しかも、このイベントにペアで挑戦すれば、
なんと! 想い人の銘の入ったアイテムとしてご提供させていただきますクポ!」
「なん……だと」
イルシュールは頭がクラクラしてきた。想い人の……銘入り、だと!?

「やる! やるぞ! やってやろうじゃないか!
待ってろヴァレンティオン! 
おまえを倒して、ボクは、彼の銘入りエプロンを見事に手に入れてみせよう!」
「倒しちゃ困るクポ……」

      ★

だが、そんな決意ひとつで、3年の間に築かれた冒険者仲間という関係を壊せるほど、
イルシュールのハートはタフではなかった。
ありていに言って、チキンだった。
仲間のために身体を張ってモンスターの前に立つことはできても、
「今度のイベント、ボクとペアで挑戦してみないか?」
そのひとことが言えない。
言えるわけがない。だって、きっと死ぬほど恥ずかしい。想像するだけで身悶えてしまう。

「どうしたんですか、イル?」
どきりとイルシュールのハートが踊る。鼓動が早鐘を打った。
「な、ななな、なにかな、レオ!」
「いえ、さきほどから落ち着かない様子でしたので……」
長髪を風になびかせたエルヴァーンの青年が、心配そうにイルシュールの顔を覗き込んでくる。
ふんわりとした白いローブが彼の身体の動きに合わせて揺れた。
「そ、そうかな! なんでもないぞ!」
「それならいいのですが」
青い目がもう一度だけイルシュールを見つめてくる。
「気分が悪いようでしたら、治癒の魔法をお掛けしましょうか?」
長い杖を身体の前で振りながらレオ──レオポルノールが言った。
イルが好きなひと。
3年前に一緒にパーティを組んだときから好きなひとだ。

ぼうっとしていたイルシュールの足下から声が聞こえてきた。
「なーに言ってんのよ。イルが落ち着きないのなんて、いつものことじゃないの」
腕を頭の後ろで組んだタルタルの娘がジト目で見上げてきている。
「そうだな、いつものことだ」
「デスネ」
「まあ、そういうな。彼女にだって本当に不調のときはある。たぶんな」
イルシュールの仲間たち。パーティの残りの4人が好き勝手なことを言っていた。

結局『2人で』とは、とても言い出せなくて、『みんなでやろうよ』と誤魔化した。
その結果、いつもの6人で街を走り回って、ひたすら他人のためにチョコレートを運んでいる。
「こうしてみなで楽しむのも、けっこう良いものですね、イル」
「そ、そうだよね! あ、あははははは……」
──涙が出てくる。

「さて、そろそろ日も暮れそうです。あとはイベントの報告をしてお終いですか?」
「えっ……」
言われて気づく。
あれほど青かった空が、もう暗くなり始めている。西のほうが赤く染まっていた。
今年のヴァレンティオンも、このまま終わってしまうのだろうか──。
それは──嫌だ。
意を決してイルシュールは顔を上げた。拳を握りしめ、腰だめに構え──気合いを溜めた。
告白は、気合いだ!
「あの!」

「あー、あたしはパス!」
出鼻を挫かれた。決意がしぼんでしまう。
なんて間の悪いタイミングで割り込んでくるのか、
イルシュールは仲間を睨みつけてしまった、けど──。

タルタル娘が手をひらひらと振りながら、
「お腹空いちゃった。あたし先に『獅子の泉』に行ってる〜」
「おう。それはいいな。俺もそうするわ」
「イイデスネ。賛成デス」
「うむ。腹が減っては冒険はできぬ。たぶんな」
「とゆーことで、あたしたちは『獅子の泉』に行ってるから」
言いたいだけ言って、4人は背中を向けてさっさと歩きだしてしまう。
4人が最後に何故かちょっとだけ笑った気がした。
「ちょ、ちょっと待っ──はっ」
慌ててイルシュールは振り返る。この流れだとまさかレオまで──。

困った顔をしたレオポルノールが口を開いた。
「はいはい。そんな顔をしないでください。だいじょうぶ、私は付き合ってあげますから。
これでも荷物持ちくらいはできますよ?」
「あ、ああ。そ、そうか」
「いつものごとく面倒なことからはさっさと逃げますよねぇ、あのひとたち……」
「そそ、そうだな、うん。あー、そ、それなんだが……」
「イベント景品の受け取りはどこでしたっけ?
まあ、急ぐわけでなし。ゆっくりと行きましょうか、イル?」
「お、おう。わかったぞ」
2人並んで歩き始める。

どうやら、心を落ち着ける時間は確保できるらしい。
息を吸って、吐いて、吸って。
鼓動が8回打つまで待ってから、ついにイルシュールは──


夕焼け空に照らされて、真っ赤に染まった顔をしたエルヴァーン娘が、
ヴァレンティオン・デーのその日、ついに幸せそうな微笑みを浮かべることになった。


Story : Miyabi Hasegawa
Illustration : Mitsuhiro Arita

開催期間

2015年2月3日(火)17:00頃〜2月18日(水)17:00頃

NPCの恋人探しを手伝おう

まずは、イベント期間中に出現する以下のMoogleから話を聞きましょう。
Moogleは、さまざまな報酬アイテムを用意して皆さんが来るのを待っています。


南サンドリア/北サンドリア


バストゥーク鉱山区/バストゥーク商業区


ウィンダス水の区(北側)/ウィンダス森の区


チョコボの恋人探しを手伝おう

イベント期間中、以下の場所にいるNPCに話しかけるとミニゲームに挑戦できます。

南サンドリア/バストゥーク鉱山区/ウィンダス森の区


ミニゲームをクリアすると調度品「テンダーブーケ」をはじめ、さまざまなアイテムが手に入ります。