ゆらゆらハロウィン (2015/10/06)

みなさま、ハッピー・ハロウィン!

中の国にすっかり定着したハロウィンのお祭りは、
冒険者たちもこぞって参加してくれるお祭りになりました。

なかには街の人たちと同じように、
お化けに仮装しながらお菓子を配ってくれる冒険者も!

そこで、今年は仮装コンテスト「ピンクマスカレード」を開いて、
そんな冒険者のみなさんに、お礼の品をプレゼントしよう、ということになりました。

ぜひ、ふるって参加してほしいです!

仮装を審査してくれるのは、ちょっと頼りない審査委員長だけれど、
それもひろ〜い心で受けとめてほしいかな。

では、ピンクマスカレードの会場でお待ちしておりま〜す!

「えっ? あたしに?」
「はい。コンテストの審査委員長をしていただきたい、のです」
ジュノ商工会議所から派遣されたという太った男は、笑みを浮かべ両手をこすりあわせた。

「ハーナティお嬢さんは、毎年のハロウィンで、それは見事な仮装をなさっているとか。
そのお得意の腕前をバストゥークのみなさんの前で披露しつつ、審査をしていただければ!」

ハーナティは、きれいな両の眉を額にきゅっと寄せながら傍らの父親を見る。

父親も笑みを浮かべていた。
「うちの娘はかわいいからな!」
「仮装の話ですのよ? お父様」
しかも、お化けの仮装なのだ。顔なんて見えない。
「つまり、内面が滲み出るということだな! 問題ない!」

ハーナティはこっそりため息をついた。

      ★

「ねーちゃんがシンパンやるの!?」
「審査委員長、ですわ。モリト」
そばかすの少年に向かってハーナティは言った。

ハーナティとモリトは、バストゥーク商業区にある競売所前の噴水の縁に腰掛けている。
お互い、とくに待ち合わせなんてしていないけれど、
こうして何故か偶然たまたま出会うことが多かった。

モリトは、鉱山区に住んでいて、ハーナティは商業区の商人の娘である。
本来ならば接点のない二人だった。
しかも、ハーナティのほうがモリトよりも五つも年上だ。
お姉さんなのだ。偉いのである。だって、お姉さんだし。と、ハーナティは思っている。

だが、どういうわけか、会話を始めると彼のほうがいつも偉そうだった。

「ねーちゃんに審査委員長なんて無理だろ?」
「無理じゃありません」
視線を逸らし、つんと澄まし顔をしてみせる。
モリトはにやにや笑っていた。なんか、悔しい。ハーナティは唇を噛んだ。

確かに審査委員長と言っても名ばかりである。
三国それぞれから、これはという子どもを選んでいるという噂。
でなければハーナティのような小娘をわざわざ招待して頼みはすまい。
彼女は自尊心は高かったが、それで自分を過大評価する性格ではなかった。

「じゃあ、どうしてそんなに困った顔をしてるのさ?」
「あたし、困った顔なんてしてないわ」
「虫歯のときに最高に美味しいプリンが出てきたときみたいな顔してるよ」

どんな顔よ? 失礼しちゃう。
あまつさえ、相談に乗ってやろうか、などと言い出した。

「そもそも今年のハロウィンは参加を見合わせようと思っていたのですわ」
モリトが驚いた顔をする。
「えっ。だって、今まで毎年参加してたじゃん!」
「だって……。モリト、あなた本当に相談に乗ってくれるつもりがあるんですの?」

      ★

「これ、失敗作じゃん」
「でも作りなおしてもらう時間はないのですわ」

自分のベッドの上に広げてあるのは今年のハロウィンのための衣装だった。
まさかモリトを部屋に招待する日がくるとは思わなかった。
「去年は頭に被るだけでしたでしょ。
今年はいっそ全身を覆うものにしようって思って」
「でもこれ、フランじゃないよ。
でっかすぎるし、なんか変なもんが頭にくっついてるじゃん」
「なのですわ……」
フランは近東に出るというモンスターだった。つぶれたプリンのような姿をしている。

着ぐるみは昨年の仮装を元にした特注品なのだけれど、
どういうわけか、注文したイメージとは、かなり違うものができあがってきた。
確かに形はプリンに似ている。
けれど、ガルカでさえ余るほど大きくて、
ハーナティが被ると、お化けの身体の半分ほどにしかならないのだ。
裾をずるずると引きずりながら歩いてしまう。ぜったい転ぶ。間違いない。

「去年のやつを使えば?」
「もうありませんわ。毎年、祭の終わりに子どもたちにあげてしまいますから」
「断っちゃうとか」
「それも考えました。ただ、お父様、昔からジュノにお店を出すのが夢なんですよね……」

あのお父様のことだ。
ハーナティが断っても笑って許してくれるだろうけれど。

「でも、どー考えても、ねえちゃんにはでっかすぎるよ。
ボク……オレの背丈の倍はあるじゃん。これ着て歩くなんて無理だって……」
「オレ?」
「なんだよ」
「いえ、なんでも。生意気盛りですものね。わかっていますわ。
……そうですわね、無理ですわ。残念だけど──」
「うんまあでも」
「え?」
「手がないこともないかな」

      ★

(あ、あ、あの、大丈夫ですの!?)
(だいじょうぶだって! 信じて!)

そうは言ってもふらつくのだ。倒れてしまいそうだった。

「では、今回の【仮装コンテスト】の審査委員長をご紹介します!」
案内役に呼ばれて、あたし「たち」は前に出た。

大きすぎる仮装──もはや着ぐるみのような──をハーナティはなんとか着こなしていた。
モリトに肩車してもらって。

(ほんとに、ほんとに大丈夫ですの!?)
(だ、だいじょう……ぶ!)

五つも年下なのだ。まだ子どもだと思っていた。
だが、昨年からだって、もう一年経っている。
身体も大きくなったし、肩幅も広くなった。
いつの間にか、モリトの視線が自分と同じになっていることにハーナティは気づいていた。
オレの肩に乗れば丁度だよね、
そう言ったときは冗談にしか思えなかったのだが。

「おお、これは見事な仮装です! お化けになりきっています!」

観客たちは、お化けの衣装のなかに、まさか二人の子どもが入っているとは思わない。
ふらふらゆらゆら、うごめく腕。
ゆらゆらふらふら、ありえないところで曲がる身体。
それは観客たちに真に迫った演技として受け取られた。

万雷の拍手が沸き起こる。

(なんとか、なりそうだね。ねーちゃん)
(そう……ですわね)

ハーナティの紹介が終わると、
仮装した冒険者たちが次々と壇上に上がってくる。
だがハーナティは、どうか転びませんように、と祈るので精一杯だ。
どんな採点をしたのかも覚えていない。
自分を支えてくれるモリトの身体にしがみついていた。

ふらふらゆらゆら、ふわつく身体。
ゆらゆらふらふら、ハーナティの気持ちもゆれていた。

五つも年下だと思っていたけれど。
でもそうね。
これが終わったら、お礼のキスくらいしてあげてもいいかもしれないわ。

あ、あくまでも、お礼だけど──。

ふわふわゆらゆら。
ゆらゆらふわふわ。
ハーナティの身体と心をゆらしながら、コンテストの時間は過ぎてゆく。


Story : Miyabi Hasegawa
Illustration : Mitsuhiro Arita

開催期間

2015年10月11日(日)0:00頃〜11月2日(月)23:00頃まで

仮装コンテスト「ピンクマスカレード」に参加しよう!

ハロウィンの会場となる街で、仮装コンテスト「ピンクマスカレード」が実施されます。
NPC” Ensemble Maven”と会話をして、その後「おやつ」を手渡せばコンテストが開始。
審査委員長が、そのとき着ている衣装を審査してくれます。評価の高い冒険者には特別な装備品をプレゼント!
さらに、とくに評価の高い上位3名の衣装は、会場にあるマネキンに飾られます。

▼仮装コンテストの会場
 南サンドリア(I-8)/北サンドリア(F-6)
 バストゥーク鉱山区(H-8)/バストゥーク商業区(G-8)
 ウィンダス水の区(G-9)/ウィンダス森の区(H-11)

▼賞品について
 司会進行役のNPC” Ensemble Maven”と会話をすると、
 「ボチュルススーツ」を入手できます。
 この衣装でもコンテストに参加できます。


仮装行列のおばけや獣人に「おやつ」を渡そう!

各国の住民たちは、冒険者の皆さんを驚かすために、おばけや獣人の仮装をして街を練り歩きます。
彼らに「おやつ」を手渡すと、皆さんも仮装できるようになります。
また、運がよければハロウィンにちなんだスペシャルアイテムが手に入るかもしれません!

▼獣人の仮装をした住民が練り歩きを行なうエリア
 南サンドリア/北サンドリア
 バストゥーク鉱山区/バストゥーク商業区
 ウィンダス水の区/ウィンダス森の区
 ※「おやつ」は、主に料理のスィーツ類です。
  ただし、スィーツの中にはNPCにトレードできないものがあります。


また、フラン族に仮装した住民がいるようです。フラン族にちなんだアイテムを手に入れるチャンスなので、
いつもより多めに「おやつ」を準備しておきましょう!

▼フラン族に仮装した住民が練り歩きを行なうエリア
 北サンドリア/バストゥーク商業区/ウィンダス水の区

モーグリに協力しよう!

ハロウィンの仮装行列に紛れて街に入ろうとしているモンスターがいるようです。モーグリたちは報酬を用意して、モンスター退治に協力してくれる冒険者を待っています。まずは、モーグリから話を聞いてみましょう。

▼モーグリの位置
 西ロンフォール(I-6)/東ロンフォール(G-6)
 北グスタベルグ(L-8)/南グスタベルグ(J-7)
 西サルタバルタ(J-8)/東サルタバルタ(G-11)

仮装をもっと楽しもう!

ハロウィンの開催期間中、各国の会場にはボムの飾り付けが設置されます。
特定の仮装をした2人がパーティを組んで、この飾り付けに近づくと、何か良いことが起こるようです。

交霊祭に参加しよう!

今回も、西方のエクソシストによる「交霊祭」が行われるようです。
エクソシストから、詳しい話を聞いてみましょう。

▼エクソシストの位置
 北サンドリア(D-8) Gertrude
 バストゥーク商業区(G-8) Brian
 ウィンダス水の区(北側)(F-5) Roger
 ※エクソシストからの依頼を達成した場合、
  0:00(ヴァナ・ディール時間)を経過していないと再度依頼を受けられません。

特設店で買い物をしよう!

街には特設店が設置され、ハロウィンにちなんだアイテムが販売されます。
さらに、各国の特設店で購入できる3つの燭台をモグハウスに飾り、
しばらくしてからモグハウスのモーグリに話しかけると素敵な贈り物が……。
※贈り物はイベント終了後も条件を満たしていれば受け取れます。

▼特設店の位置
 北サンドリア(D-8)
 バストゥーク鉱山区(H-9)
 ウィンダス水の区(北側)(G-10)