ひなまつり 〜今も昔も〜 (2016/02/15)

もうすぐ「ひなまつり」!
ライスなお菓子がいっぱい出回る季節クポ!

ひなまつりは、東方のフェスティバルとして伝わってきたクポね。

女の子の健やかな成長と幸せを願ってライスで作られたスィーツを食べたり、
人形を飾ったりするクポ。

近年になって中の国でも盛んになってきたお祭りだけど、
水晶大戦の頃にはもう、
東にそういうお祭りがあることを知っていた人はいたみたいクポ。
そうして、自分たちが勝手に想像したひなまつりで遊んでいたみたいクポ。

それは今もあまり変わらないかもしれないケド……。

でも、子どもたちが楽しく遊べるならば、それが一番大切クポ!
今年のひなまつりもみんなで楽しく祝うクポ〜〜〜!

母の話を聞くことになったきっかけはカークの人形だった。

彫金師の両親を持つ幼馴染みカークがヘンな人形を持ってきたのは、
ひなまつりを半月後に控えたある日のことだった。
最新型だというヒナドールは、
私の顔に似せたのだと言い張るお姫様の人形で、綺麗な服を着ていた。

いつも意地悪なカークのことを見直したのに。

その気持ちは次の瞬間には萎んでしまった。

スイッチを入れる(そもそも何故ヒナドールにスイッチが!?)と、
お姫様はカタカタと歩き始め、10歩ほど歩いたところで爆発した。

「自爆装置付きなんだ。すごいだろ!」

ショックで泣きだした私を心配して母がやってきた。

カークは、どうして私が泣きだしたのか分からないという顔をしていて、
母はため息をついた後で言ったのだ。

「ヒナ人形は女の子の幸せを願って飾られるものなの。
それが壊れたら悲しいでしょう?」
「喜ぶかなって思ったんだ」
「大事にすれば、ずっと傍に置いてもらえるのよ。
そのほうが素敵だし、あなたも嬉しいと思うの」

そう言って母は箪笥の上に、毎年この時期になると飾る古ぼけた人形を持ってきた。
母はその人形を見せながら話しだした。

粗末な作りをしている木彫りの人形で、お世辞にも可愛いとは言えなかった。
母はその人形を友人である隣の家の少女から贈られたのだという。

『ひなまつりって知ってる?』
『なあに、それ?』
『東の方で流行っている女の子だけのお祭りらしいわ。人形を飾って、オマイリするの』
『オマイリ?』
『東の風習で、こうやって手を合わせてから回るんだって』

そう言って、彼女は両手を何度も打ち合わせて音を立てると、
その場でくるくると回りだした。

『ヘンなのー』
『東の風習だもの、ヘンに決まってるわ。でも、楽しいでしょ』
『うん!』

彼女は歳の割りに大人びていて、母には何でも知っているお姉さんに見えていた。
だから、疑いもせずに2人は何度もくるくると回った。

その話をした数日後、幼馴染の彼女は自分で作ったという木彫りの人形を持ってきた。
『ほら、オトノサマとオヒメサマよ。ひなまつりにこういうのを飾るんだって!』
『女の子のお祭りなのに、なんで、こっちは女の子じゃないの?』
『そ、それはその……。そう、下僕よ! 召し使いってやつね!』
『そっかあ』
『ねえ、こっちのやつ、あげるわ。もらってくれない?』
母にオヒメサマのほうを渡して彼女は言った。
『え? いいの?』
『うん。もらってほしいんだ』
自分の代わりに、という言葉を彼女は最後まで言えなかった。

その日を最後に母は彼女の姿を見ていない。

セルビナの港から便りが届いて、ようやく母は人形を贈られた理由を悟ったのだった。
両親の仕事の都合で東のほうへと行くことになった、と。
水晶大戦の終わった直後で、郵便も滞りがちな頃だ。
手紙が届いたのも彼女が消えて2か月も経った後で、東のどこへ向かったのかも分からなかった。

ひなまつりの季節が終わり、大戦の痛手からゆっくりと、
国が……そして人々が癒え、母は結婚し、商業区に家を持ち、
自分が生まれ、
ひんがしでのひなまつりの祝い方が広まって、ヒナドールは誰でも飾れるものになった。

それでも毎年、母が箪笥の上に飾るのは、古ぼけた木彫りの人形だった。


抱き付いていた私を母はそっと床に降ろした。
カークがぺこりと私に頭を下げる。
「ごめん、作りなおしてくるよ」
ほら、と母に背中を押される。
私はおそるおそるカークの手を取る。
「今度は爆発しないから」
「うん。……あの」
「なに?」
「ばくはつしなければ、かわいかったわ」

カークは驚いた表情をしてから、ありがとう、と微笑み。
いつもの意地悪なカークの顔とは違ってて、なんだかドキドキしてしまった。

Story : Miyabi Hasegawa
Illustration : Mitsuhiro Arita

開催期間

2016年2月22日(月)17:00 〜 3月7日(月)23:59

モーグリの出現場所と飾り付け

イベント期間中、以下のエリアにモーグリが出現します。また、それぞれのエリアには、「ひな壇」が飾り付けられる予定です。

南サンドリア/北サンドリア


バストゥーク鉱山区/バストゥーク商業区


ウィンダス水の区(北側)/ウィンダス森の区


モーグリに話しかけると、ひなまつりにちなんだアイテムを受け取れます。